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調剤×生鮮含む食品+ドミナント戦略で5000億円をめざすクリエイトSDの勝算

ドラッグストア「クリエイト エス・ディー」(中核子会社の社名も同名)、調剤薬局などを1都7県に展開するクリエイトSDホールディングス(神奈川県/廣瀨泰三)はさきごろ、2022年5月期の連結決算を発表。売上高は3507億4400万円(対前期比3.6%増)、営業利益は181億7600万円(同2.4%減)、経常利益は186億6500万円(同2.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は125億9500万円(同1.8%増)だった。
価格競争、他業種からの参入や統合・再編が目まぐるしいドラッグストア業界。そうした中で、同社はドミナント戦略を軸に、食品強化を鮮明に打ち出し、ポジションの確保とさらなるシェア拡大を虎視眈々と狙っている。

関東・東海エリアへの集中出店で地域制圧

 クリエイトSDホールディングスの出店は、関東東海エリアへ全集中。人口集中エリアに絞り込むことで出店効率の最大化を図っている。なかでも同社の拠点である神奈川県には422店舗(22年5月末、内訳はドラッグストア390、専門薬局27、スーパーマーケット5)を出店。全728店舗(うちドラッグストア686)に対し、実に約6割におよぶ。

 競合の侵攻に対し、基盤エリアでは認知度でもサービスでも負けないポジションを確保することで、聖地を死守。その上で、じわじわと周辺エリアに拠点を広げていく戦略だ。

4割におよぶ食品比率が示す同社の戦略

 食品の強化は、もはやドラッグストアにとってはスタンダード。だが、クリエイトエス・ディーにとっては、戦略をより有効に機能させるための重要な施策となっている。

 ドミナント戦略により店舗間の密度が高い分、来店の必然性が低ければその頻度が減り、共倒れになるリスクがある。食品は、とりわけ来店頻度を高める観点では不可欠なアイテムなのだ。

 セグメント別で見ると、クリエイトエス・ディー単体の食料品の割合は39.6%でほぼ4割に達する。昨今は他社も食料品比率が高まる一方だが、それを考慮しても高水準といえるだろう。2022年5月期の決算では、感染対策商材などでOTCが前年割れとなった一方で、食品売上は対前期比4.2%増の1364億円の売上を計上。もはや大黒柱と言える数字だ。もう1つ強化しているのが調剤だ。調剤比率は前期末の34.3%から5ポイント増の39.9%まで高まり、既存店ベースの調剤売上は8%増と好調だ。23年5月期は46.9%を目標にしている。

6年後に売上高5000億円、1000店舗達成めざす

 クリエイトSDホールディングスが25年5月期を最終とする3ヶ年計画としてかかげる目標は、売上高 4200億円、経常利益率 5.0%、店舗数 850店舗。そして、2028年5月期までの目標として、売上高 5000億円、経常利益率 5.0%、店舗数 1000店舗を掲げる。

 6年後に1000店舗の大台突破を目指す戦略の軸は、もちろんこれまで同様に、人口増加エリアへの集中出店だ。

 ただし、今後は単に店舗を増やすだけでなく、出店形態を多様化することで、高密度出店のリスクを分散する。キーとなるのはやはり食品だ。

改装やコンセ業態の推進で店舗を多様化

 生鮮食品や冷凍食品などの品揃えの充実を図り、中食ニーズもしっかり取り込みながら来店頻度をアップ。単に既存店の展開を拡大するだけでなく、改装やコンセッショナリー業態を推進するなどで、より効果的な融合を実現し、「医・食」のワンストップによる利便性を強化する。とくに2020年に子会社化したゆりストアとの協業により、ドラッグストア複合業態の開発を行っており、この成果を受け、ゆりストアや地場スーパーマーケット、生鮮専門店とコラボレーションするかたちでコンセッショナリー出店を進めていく。

 めざすのは、生活と健康を支える地域に欠かせない小売チェーンだ。小商圏で圧倒的な存在感を示し、ユーザーを抱え込んでインフラとして機能。利便性と専門性を兼ね備える、生活によりリンクした業態包含型の小売として、地域にガッシリと根を張る。

 これらを補完する施策として、デジタル戦略も加速する。これまでカード会員が軸だった会員形態をアプリ会員へシフトさせ、より密な関係性を構築。具体的にはアプリを通じた各種クーポンの配布や調剤機能の拡充などで、利便性を高め、店舗利用客の囲い込みを図る。

 キャッシュレス化もさらに推し進める。併せて、自社電子マネー「おさいふHippo」の利用を推進することで、支払い手数料を抑制。管理コストも圧縮する。

調剤併設率65%で収益力も強固に

 強みをトコトン磨き上げるのと並行し、収益力も高めていく。その役割を担うのが調剤だ。まずは3年後に調剤併設率55%、そして2028年には65%まで伸ばし、強固な収益基盤を確立する。65%という数字は、業界の調剤比率において3位のクスリのアオキに次ぐ水準となる(クスリのアオキは現在50%程度で26年5月期までに70%をめざしている)

 地域に貢献する総合ヘルスケアサポートの推進をミッションに、「生活・予防・医療・介護」の各領域をシームレスにカバーし、ユーザーの生活不安を解消するインフラとして存在感を高める同社。陣取り合戦の様相が色濃いドラッグストア業界の仁義なき戦いは、業容拡大が業界間の差異をなくし、結果的に他業種も巻き込みながら、さらに激化していきそうだ。