ドン・キホーテ(東京都/吉田直樹社長)を抱えるパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(同:以下、PPIH)は先ごろ、2022年6月期の決算を発表した。33期連続の増収増益を果たした同社は今後どのような戦略を描いているのか。本稿では、決算概況と中長期経営計画について解説する。
収益性の改善で成果
PPIHの22年6月期連結決算は、売上高1兆8312億円(対前期比7.2%増)、営業利益886億円(同9.2%増)、経常利益1004億円(同23.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益619億円(同15.2%)。33期連続の増収増益を達成した。海外事業におけるゲルソンズ買収や国内事業におけるDS(ディスカウントストア)事業の新規出店や既存店の回復などが売上増に寄与した。
各セグメントの業績をみると、DS事業の売上高は1兆3274億円(同12.2%増)、営業利益は722億円(同30.7%増)の増収増益だった。戦略施策であるプライベートブランド(PB)/OEM商品の強化やプライシング精度の向上が奏功し、既存店の粗利率は同0.5ポイント(pt)増となった。PB/OEMの売上高構成比も同2.1pt増の14.2%に伸長した。また、在庫回転率向上にも取り組み、既存店の期末在庫金額は同152億円減と大幅な削減に成功。収益性の改善を重ねている。
総合スーパー(GMS)事業の売上高は4295億円(同4.5%減)、営業利益は145億円(同12.2%減)の減収減益だった。GMS事業の中核企業ユニー(愛知県/関口憲司社長)で、既存店がUDリテール(神奈川県/片桐三希成社長)運営のダブルネーム店舗「MEGAドン・キホーテUNY」「ドン・キホーテUNY」に転換していることから、同事業の売上高・営業利益はともに減少しているものの、DS事業への増収効果は103億円となっている。営業利益も期初目標は達成。第4四半期単独では高粗利カテゴリーの季節商品が伸長したこともあり、粗利率が1.7pt増となったことが目標達成に寄与した。
オリジナル商品の構成比を25%に
PPIHは中長期経営計画「Visonary 2025/2030」を発表した。20年2月に発表した「Passion 2030」から、コロナ禍の外部環境の変化を受け、新たに策定したものだ。定量目標として、25年6月期に売上高2兆円、営業利益1200億円、30年6月期に営業利益2000億円をめざす。利益重視の経営戦略を進めるため、30年6月期における売上高の目標は除外した。
収益性の向上を成長方針とする中長期経営計画のなかでとくに注力するのが「PPIH流SPAの推進」だ。数値目標として国内のPB/OEMの売上高構成比を22年6月期~25年6月期で15.3%から25.0%に、商品粗利率を25.5%から27.5%に高めることを掲げる。
吉田社長はオリジナル商品強化の目的として「粗利を確保しながら、お客さまにとっていつも“サムシング・ニュー”を見つけることのできる魅力的な買い場をつくり続けること」と話す。店舗イメージに適した「CV+D+A(コンビニエンス+ディスカウント性+アミューズメント性)」を訴求できるオリジナル商品を開発していく考えだ。これに伴い、商品部の大規模な組織改革とDS事業・GMS事業の商品部統合も実施し、SPA化のノウハウ向上に取り組む。
アプリの機能強化でDXを推進
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じた「新しいCV+D+A」の提供に取り組む。その軸となるのがPPIHのグループ各店舗で使用できるアプリ「majica(マジカ)」だ。登録会員数は22年7月に1000万人を突破。今後はさまざまな機能をマジカに集約する。個々人に合わせた情報発信やクーポンの配布などで顧客体験の向上を図るほか、商品情報や在庫有無の検索、口コミ投稿などのサービスを付加し、「新しいCV+D+A」の中核ツールとして活用する方針だ。
Z世代をターゲットにした「キラキラドンキ」(東京都江東区)や寿司専門店の「鮮選寿司」(香港)など、国内外で新業態の開発にも注力しているPPIH。店舗・商品ともに独自化を進め、アプリによる顧客体験の向上にも取り組む同社は、新たな中長期経営計画のもと、さらなる進化を遂げようとしている。