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コロナ禍で好調続く生協宅配 今あらためて生協が支持される理由

 日本生活協同組合連合会(東京都:以下、日本生協連)が6月中頃に発表した2021年度の全国生協の概況は、コロナ禍の在宅ニーズを継続して取り込み、2年連続で好調な結果となった。これを成長投資に活かし、22年度は、生協宅配のリノベーション(再強化)とコープ商品の差別化を推進する。一方、ここにきて急激な物価・エネルギー価格の上昇など、事業を取り巻く状況は一気に厳しくなっている。こうしたなか生協陣はいかに対応していくのかーーー。

減収減益もコロナ禍の
高止まり続く

 全国63の主要地域生協の21年度事業概況(推計)は、供給高が(小売業の売上高に相当)対前年度比98.9%の3兆922億円、経常剰余(同経常利益に相当)率は同0.41ポイント(pt)減の2.72%で、減収減益だった。

 しかし、コロナ感染拡大前の19年度との比較では、供給高は111.3%、経常剰余は253.4%、経常剰余率は1.56pt増と高止まりしている。21年度予算(概ね20年度比95~96%)も上回った。

 全国の生協組合員数(21年度推計値)は3027万人(同20年度比101.0%)と初の3000万人台となり、世帯当たり加入率は39.1%とアップしている。

日本生協連は21年度の事業実績と、22年度の重点方針を発表した。(右から)代表理事統括専務の嶋田裕之氏、代表理事会長の土屋 敏夫氏、代表理事事業担当専務の藤井喜継氏

若い世代の獲得進む
Web加入は240%に

 この2年間のコロナ禍による事業への影響では、在宅時間が増えたことからストック型商品のニーズが高まり、要冷品や簡便・即食系の商品が好調だった。
また、生協が長年の課題としてきた若い世代の組合員の新規加入が進み、単身世帯の利用も増加した。供給高増加に欠かせない組合員の拡大は、対面による勧誘活動が難しいなかWeb加入が19年度比で240%超と進んだ。

 会員生協の22年度の供給高計画は、概ね21年の維持をめざす中、4、5月度時点の供給高は前年度を上回る好スタートとなった。経済のトレンドはマイナスで物価上昇がくらしを直撃しているが、食品宅配市場の好調を背景に宅配事業を中心に供給アップをねらう。

大きく4つの重点施策

 日本生協連は22年度を「環境変化に対応し足場を固める期間」と位置づけ、①人生100年時代に対応する事業構築、②地域ネットワークの一翼としての役割発揮、③未来を切り拓く組織づくり、④コロナ後の世界に向けた準備の大きく4 つに取り組む。重点施策には、宅配事業のリノベーション、店舗事業の黒字化、魅力ある商品づくり・品質保証、ICTによる事業・活動のデジタル変革を挙げた。

全国に広がる
DXプロジェクトの成功例

レシピを選ぶと必要な食材がまとめて注文できるWebサービス「コープシェフ」

 なかでも宅配リノベーションの推進では、20年3月から開始したデジタル変革プロジェクト「DX-CO・OPプロジェクト」でデジタル活用の実証実験を実施し、成功例を全国の地域生協へ展開している。

 たとえば21 年8月には、コープ東北サンネット事業連合(宮城県)が、レシピを選ぶと必要な食材がまとめて注文できるWebサービス「コープシェフ」をリリース。使わない場合に比べて注文金額が2割~3割高くなる効果が得られたため、同事業連合エリア全域から、コープ中国四国事業連合の中国5生協、四国4生協、コープ北陸事業連合の3生協にまで導入を広げた。 

 また、コープあいち(愛知県)は21年度、AIによる配達コースを最適化するで実験を2度にわたって実施。走行距離を10%削減する効果が得られ、燃料価格がアップする中で各生協からの注目を高めている。

世帯ごとではなく
個人ごとの対応へ

 22年度の「DX-CO・OPプロジェクト」は、これまでの実験成果の最大化や、新たなサービス開発、業務改革に取り組む。

 たとえば、組合員情報をこれまでの世帯単位から個人単位で把握し、個人レベルのサービスにつなげる統合IDや、過去の注文履歴からAI予測により各家庭に適したカタログの配布、注文のレコメンデーション機能「クイック注文」などの実験を始めている。

エコマークやFSC認証
商品供給額が2ケタ伸長

 重点施策のうち、魅力ある商品づくり・品質保証では、「コープ商品『おいしさと健康でNo.1』へ」をスローガンに組合員の声を反映させた商品の開発・改善に引き続き取り組むほか、時短商品や「コープ商品」のエシカル対応を強化する。

 21年度の「コープ商品」におけるエシカル消費対応の取り組みについては、既存商品のプラチック製容器・紙製品の環境対応を推進。その結果、エコマーク認定商品は同134%とFSC認証商品は同116%と、供給金額が伸長した。22年度はエシカル消費対応商品をさらに拡大し、総供給高2137億円(同105%)をめざす。

 具体的な取り組みとして、水産分野の「エコラベル認証」ロゴ付商品の拡充と、「マスバランス(MB)ランクのRSPO認証」を受けたパーム油の利用を拡大する。

商品政策ではエシカル消費対応商品で差別化を図る

不確実性が高まる世界で
注目される生協の「助けあい」

 昨今、ウクライナ情勢や、物価やエネルギー価格の高騰、深刻化する環境問題など、人々の生活はさまざまな課題・不安に包まれている。そうしたなか日本生協連代表理事会長の土屋敏夫氏は、「生活協同組合の助け合い、危機におけるつながる力の価値が改めて鮮明になっている。山積する課題に対して組合員、会員生協と力を合わせ、解決に力を注いでいく」と危機に対して主体的に取り組む姿勢を示した。
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 生協の強みは3000万人の組合員と、地域生協全体で3兆円にも上る事業の総合力だ。大きく変化する時代に、助け合いの価値やSDGs視点での事業・活動など、生協ならではの特徴をいかに打ち出せるかがポイントになる。