生鮮強化の取り組みとともに、トライアルにおいて同様に劇的な進化を遂げているのが総菜だ。同部門を率いるのが、トライアルグループの一員である明治屋(福岡県/大塚長務社長)。プロの料理人が開発する本格的な味わいかつ手頃な価格の総菜メニューは、トライアルの強力な差別化ツールとなっている。その背景には、緻密な戦略と“仕組み”が存在していた。
「テストキッチン」に広がる異様な光景
福岡市内にあるトライアルグループの本社1階。社員だけでなく取引先のメーカー関係者も多く行きかうロビーフロアの片隅に、意外な光景が広がっている。
ガラス越しに見えるのは、さまざまな調理機器が備え付けられたキッチン。その中では、調理用の白衣に身を包んだ複数の料理人が、出汁を引いていたり、コース料理の1皿のごとく肉に丁寧にソースを振りかけていたり、中華鍋を振っていたりする姿が……。往年の人気番組『料理の鉄人』を彷彿とさせる異様な空間である。
実はこの場所、トライアルの総菜部門を統括する子会社・明治屋の「テストキッチン」。ほぼ毎日、料理人が新メニューの開発や既存メニューの改良を行っている。業種やジャンルを問わず、商品開発の中枢がこのように外部の目に触れる場所にあることはめずらしいかもしれない。「トライアルグループの社員をはじめ、さまざまな人が行きかうこの場所で、われわれが本気で総菜開発に取り組んでいることを示したいというねらいもある」と、明治屋の大塚長務社長は説明する。
プロの料理人が総菜開発に携わる背景
ここまで開発担当者を“料理人”と記してきたが、実際に彼らは正真正銘、プロの料理人である。ほぼ全員が和食、フレンチ、中華など各ジャンルの有名店で修業した経験を持ち、彼らが持つ技術や知見が、明治屋の総菜開発に生かされているのだ。ちなみに彼らはメニュー監修を依頼された外部の料理人ではない。明治屋に勤めるれっきとした社員である。
他に類を見ないこうした体制は、どのようにして構築されているのか。その背景には、創業者である大塚社長のユニークな経歴がある。
実は大塚社長
・・・この記事は有料会員向けです。続きをご覧の方はこちらのリンクからログインの上閲覧ください。