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激変、格差!上場小売業決算2022まとめ 営業収益ランキングトップ10

決算ランキング大

前年度に引き続き、コロナ禍の影響を大きく受けることになった上場小売業の2021年度決算。業態間格差が鮮明となった前年度とは異なり、21年度は企業間の格差が浮き彫りになった。本稿では、2021年7月1日号特集「決算2021ランキング」からデータの一部を抜粋し、営業収益上位企業の動向を見ていきたい(営業収益は売上高+営業収入 売上高は主に商品の売買に伴うもので、営業収入は卸売上や不動産収入の合計。売上として全額計上する企業もあれば、営業収入を多く計上する企業もあるため、基準を同じにするために営業収益を使っている)。

営業収益ランキング、上位10社の顔ぶれは!?

 「ダイヤモンド・チェーンストア」誌では、毎年7月1日号の「決算ランキング」特集で、上場小売業(外食を除く)の営業収益ランキングを掲載している。

 今年度のランキングでの最大の変化は、セブン&アイ・ホールディングス(東京都:以下、セブン&アイ)が、イオン(千葉県)を抜いて営業収益ランキングのトップに躍り出たことだ。21年5月に買収した、米ガソリンスタンド併設型CVSの「スピードウェイ(Speedway)」の業績が加算された影響で大幅増収を果たし、長年不動の1位だったイオンと首位交代となった。

  社名 営業収益 増減 営業利益 増減 決算期 業態
1 セブン&アイ・HD 8,749,752 51.7 387,653 5.8 22/2
2 イオン 8,715,957 1.3 174,312 15.8 22/2
3 ファミリーマート 2,841,976 2.8 65,307 ▲ 8.3 22/2 CVS
4 ローソン 2,442,732 4.0 47,096 15.2 22/2 CVS
5 ファーストリテイリング 2,132,992 6.2 249,011 66.7 21/8 AP
6 PPIH 1,708,635 1.6 81,306 7.8 21/6 SP
7 ヤマダHD 1,619,379 ▲ 7.6 65,703 ▲ 28.6 22/3 CE
8 ツルハHD 919,303 9.3 48,377 7.5 21/5 DgS
9 ビックカメラ 834,060 ▲ 1.6 18,217 51.0 21/8 CE
10 ニトリHD 811,581 13.2 138,270 0.4 22/2 SP

図表  場小売業営業収益ランキングトップ10
単位:百万円、% 
※CVSの営業収益は連結のチェーン全店売上高を使用(ファミリーマートのみ単体)
※ファミリーマート、ファーストリテイリングはIFRS
HD=ホールディングス
PPIH=パン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングス

 3~5位はファミリーマート(東京都)、ローソン(東京都)、ファーストリテイリング(山口県)と顔ぶれに変化はなかったが、昨年7位のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(東京都)が家電量販店最大手のヤマダホールディングス(群馬県)を抜いて6位に浮上した。また、昨年9位のツルハホールディングス(北海道)が、家電大手のビックカメラ(東京都)を抜いて8位に順位を上げている。

 また、10位にはホームファニシング最大手のニトリホールディングス(北海道)が新たにランクイン。21年1月に連結子会社化したHC企業の島忠(埼玉県)の業績が加算されたことにより、大幅増収を果たし、昨年16位から急浮上した。

首位セブン&アイ、グループ内格差が鮮明に

 ランキング上位企業の動向をみていくと、首位のセブン&アイの22年2月期業績は営業収益が同51.7%増の8兆7497億円、営業利益が同5.8%減の3876億円だった。前述のとおり、米スピードウェイの業績が加算された影響が大きく、これにより営業収益全体の約6割、営業利益全体の約4割を海外CVS事業が占めるようになった(22年2月期実績)。

 国内事業会社では、セブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)とヨークベニマル(福島県)が増収・営業減益、祖業であるGMSのイトーヨーカ堂(東京都)は減収・営業減益、百貨店のそごう・西武(東京都)は、増収・営業赤字となっている。

 ランキング2位となったイオンの22年2月期連結業績は、営業収益が対前期比1.3%増の8兆7159億円、営業利益が同15.8%増の1743億円だった。

 主要上場事業会社の業績を見ていくと、イオンリテール(千葉県)は苦戦が長引き、減収、2期連続の営業赤字に沈んだ。本誌区分上ではGMS業態としているイオン北海道(北海道)は増収・営業減益、イオン九州は20年9月に経営統合した旧マックスバリュ九州および旧イオンストア九州の業績がフル加算されたことにより、大幅な増収・営業増益となっている。

 前期とは一転して22年2月期はSM事業も苦戦し、首都圏におけるSM事業の中核をなすユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:以下、U.S.M.H)、東海・中部エリアで店舗展開するマックスバリュ東海(静岡県)も減収・営業減益となった。

CVSのミニストップ(千葉県)、衣料品のコックス(東京都)なども低調だった中で、大幅に業績を伸ばしたのはウエルシアホールディングス(東京都)だ。調剤の拡大や積極的な新規出店のほか、M&A(合併・買収)により増収・営業増益を果たしている。

ROAランキングトップは今年もあの企業!

 そのほか、「決算ランキング2021」特集では、ROAやROE、総資産回転率、売上総利益率、在庫回転率、時価総額といった経営指標のほか、既存店売上高や期末店舗数といった小売経営において重要なデータを主要業態別にまとめている。

 ここでは、その中から企業の価値企業の収益性を示す、ROAに注目してみたい。「総資産経常利益率」であるROAは、「企業に投下された総資産を使ってどれだけ効率よく収益(経常利益)を得ているか」を示し、企業の収益性を評価する指標として広く使用されている。

 本特集で掲載しているROAランキングの上位企業を見ていくと、前年度と同じく2トップはセブン-イレブン、ワークマン(東京都)だった。1位のセブン-イレブンの営業利益率は対前期比1.6ポイント(pt)減の25.8%、2位のワークマンは0.4pt増の23.1%。前年度のランキングでは、両社の間には5pt以上の差があったものの、今年度は2.7ptまで差を縮めている。

 ちなみに、両社のようなフランチャイズ方式のチェーンは、自前で資産を使うことなく効率的に店数を増やして利益を増やせるので、直営の小売業よりもROAが高くなる傾向がある。

 3位には前年度に大きく順位を落とした企業が急浮上するなど、大きな変化がみられたROAランキング。3位以下にはどの企業がランクインしているのか。本特集を参照されたい。

2022年度決算のゆくえは?

 22年度決算の焦点となるのは、相次いでニュース報道がなされる通り、やはり値上げの動向だ。さらに電力料金をはじめエネルギー費も高止まりしており、リアル店舗を運営する小売業はコスト増が懸念される。新型コロナウイルス感染症は収束の兆しを見せつつあるが、人流増加により感染が再拡大するとの観測もある。また、22年6月から外国人観光客の受け入れが始まっており、インバウンド需要の動向も注視される。

 22年度も前年度と同等、あるいはそれ以上に事業環境は見通せず、小売各社のトップは難しい経営を迫られる。本特集でまとめている各業態各社の業績指標を読み解けば、次に“勝ち組”となる企業が見えてくるかもしれない。

 

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