ショッピングセンター(SC)では、テナントの売上金を毎日預かり、月に2度、賃料や経費を精算し残額を返却している。この仕組みは日本のSCが考案したものだが他人の口座に自分のお金を入金する信頼関係が無ければ成り立つはずもない。日本人の生真面目さがなせる技と言ってもいいだろう。しかし、この仕組みを今後も続けていくのだろうか。今号は考えていきたい。
現金を預かる仕組みができた理由
不動産賃貸業では賃料の前月払い、いわゆる前家賃が一般的だが、SCでは少し異なる。それが「売上金の預かり」だ。
賃貸住宅では売上は発生しないがSCの店舗では毎日売上が発生し、レジに現金が残る。
そのレジに残った現金は銀行があれば振り込むこともできるが店舗の閉店時間は遅く、現金を持って歩くのも危険である。そこでSCのバックヤードには現金入金機が置かれ、店舗スタッフは売上金を入金し帰宅する。驚くことにこの入金先はテナントの口座では無く、SCの口座である。他人の口座にお金を振り込む信頼関係がSCとテナントにあってこそ成り立つ仕組みだ。
このSCに振り込まれた現金は、月に2回、固定賃料は前月に、歩合賃料は次月に、この他水道光熱費や経費も合わせて精算し、残額をテナントに返却する。
SCにとっては賃料の未収を防ぎ、テナントは現金保管のリスクと毎月の賃料の支払業務から開放される。双方の利害が一致した完成された仕組みである。
便利な現金預かりの仕組みだが、いずれやめる時が来る
この現金預かりの仕組みにはクレジットカードの精算も入り、効率高く運用されているが、早晩この仕組みもやめる時が来る。その理由は、
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