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コロナ禍2年目でも過去最高売上の沖縄「サンエー」、「共存と競合」の成長戦略とは

サンエー(沖縄県/上地哲誠社長)が4月5日に発表した2022年2月期連結決算は、営業収益が2043億円(対前期比0.8 %増/前期から15億円増)、営業利益83億円(同9.0 %減/同8億円減)、当期純利益66億円(同9.7%増/同5億円減)だった。

サンエー浦添西海岸PARCO CITY

売上高は過去最高を更新

 前年に続いて、厳しい状況が続いた2021年の沖縄県の小売業界。県内ではまん延防止措置や緊急事態宣言期間が述べ240日にのぼり、「脱観光依存」もままならない。

 そんな中でもサンエーは22年2月期決算において売上高で過去最高を更新。沖縄の地元産品、「くらしモア」「ローソンセレクト」などのPB商品、ワンランク上の商品を強化したほか、新規開店や店舗リニューアルなどが奏功し、市場トレンドを超える売上を確保した。

 セグメント別にみると、全体の9割以上を占める小売事業は、対前期比0.9%増の1886億円だった。一方で、コンビニエンスストア事業は同3.8%減%の68億円だった。

 営業利益については、増収に伴い粗利益が増加した一方で、人件費や店舗設備費の増加により、減益で着地している。

2022年6月、宮古島に大型商業施設を開業

 23年2月期の業績予想では、営業収益が対前期比3.3 %増/前期から56億円増の2110億円、営業利益が同21.5%増/同17億円増の101億円、当期純利益が同4.4%増/同2億円増の69億円と増収増益をめざす。

 店舗リニューアルにより売上増加を図ると同時に、増収に伴う粗利益増により人件費などの販管費増を吸収する。

 感染状況や石油などエネルギー資源の価格高騰を発端とした物価高など、沖縄の事業環境は今期も相変わらず不透明だ。そんな環境下でもサンエーは、企業理念(7大基本)に基づきつつ、店舗や商品力向上、サプライチェーン構築、人材育成、企業体質の強化を通じ、目標達成に努める。

 出店計画としては今年6月17日、県内随一の人気スポットかつ創業の地である宮古島市平良に、駐車収容力530台、店舗延べ床面積5853㎡の「サンエー宮古島シティ」をオープンする。大型スポーツ施設「JTA宮古島ドーム」と隣り合わせているうえに、宮古空港にも近い。

 デジタル・トランスフォーメーション(DX)としては、3月にローンチしたサンエーアプリが好調で、登録数は4月時点で10万人に達する。電子マネー(デジタルサンエーカード)として利用できるだけでなく、チラシ・クーポン・キャンペーン応募・オンラインショップやネットスーパーとの連携など便利機能満載だ。直営外食店の順番待ち・お持ち帰り注文も、アプリでできる。

「共存と競合」によって成長してきたサンエー

 1位サンエー(小売業)、2位徳洲会(病院)、3位沖縄電力(エネルギー)…沖縄企業の売上高ランキングは、ベスト8まですべて非製造業が並ぶ。もともと製造業の基盤の弱い沖縄は、観光産業に大きく依存してきた。

 国内外からの観光人気や移住人気に伴う人口流入もあり、沖縄県の小売販売額は復興後の50年で5倍にまで拡大した。本土が3倍だったことを考えると、急成長ぶりがわかる。

 パイが大きく膨らんでいただけに、地元小売企業の経営環境も比較的恵まれていた。本土から進出してくる大手流通チャネルの多くは、地元企業との連携の道を選んだ。長いこと米軍統治下で本土と隔離され、生活習慣・食文化・商慣行も異なる沖縄で成功するには地域密着が欠かせず、結果的に地元企業のノウハウとネットワークに頼らざるを得ない。

 コンビニエンスストアを例にとると、セブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)は県内で建設・スーパーを営む金秀グループと2019年にフランチャイズ契約を締結する。ファミリーマート(東京都/細見研介社長)も、返還前の琉球貿易で財を成し現在はデパートや不動産業を営むリウボウグループと合弁を組んだ。

 残るローソン(東京都/竹増貞信社長)は当初単独での進出を試みるも、結局はサンエーと合弁企業を立ち上げた。単独時代は、用地を確保しようにも「内地の会社に土地は貸さない」地主も少なくなく、苦労が絶えなかったようだ。

 コンビニだけではない。サンエーは家電量販店「エディオン」、「無印良品」、大手ドラッグストアの「マツモトキヨシ」、九州を拠点とするレストランチェーン「ジョイフル」などとフランチャイズ契約を結んでおり、「パルコ」とは共同出資会社パルコシティを立ち上げた。

 一方でサンエーは、いち早く郊外に大型スーパーをオープンさせるなど、本土の大手資本に対抗してきた。「共存と競合」の両輪で走ってきたからこそ、創業1950年の雑貨屋が店舗網70店の県内トップ企業にまで成長できたのだ。

苦境脱出のカギは「モノづくり」にあり?

 そして現在、右肩上がりの経営環境は大きく変わった。コロナ禍が襲いかかり、インバウンドは消滅、国内外からの観光客も激減した。観光を背景に成長してきた沖縄の小売、サービス業は大打撃を受けた。もちろんサンエーにも影響はおよび、閉店を決めたテナントも出始めた。

 苦境脱出のカギを握る1つが、モノづくり強化だ。沖縄における製造業の貧弱さは特産品にまでおよび、沖縄名物の「紅芋タルト」でさえ県外に生産を委託しているというケースもある。

 サンエーは、今まで地元密着の商品で人気を集めてきた。現地生産を促せばこれまでの強みを生かしつつ、生産者利益を沖縄に落とすことができる。アフターコロナを見据えるうえでのヒントになり得るとされている。