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受注から完成まで5分以内! ローソンが実験するゴーストレストラン事業をレポート

  コンビニエンスストア大手ローソン(東京都/竹増貞信社長)は1月27日、店内の厨房を活用した宅配調理事業、いわゆるゴーストレストラン事業に参入したと発表した。コロナ禍で拡大するデリバリー需要の取り込みを図る。実験店舗を訪れ、具体的な取り組みを取材した。

「まちかど厨房」と
デリバリー提携店を生かす

ローソンがゴーストレストラン事業の実証実験を行う「ローソン飯田橋三丁目店」(東京都千代田区)

 ローソンが実証実験を行うのは、JR「飯田橋」駅から徒歩数分にある「ローソン飯田橋三丁目店」(東京都千代田区)。まずは都心部で需要があるのかを把握するべく、21年11月から1店舗で実験を開始した。

 ローソンは近年、大手競合チェーンとの差別化策として、店内に厨房を設置して出来たて総菜を提供する「まちかど厨房」の導入店を増やしてきた。その数は21年2月期末には約6400店、現在では約8000店まで広がっている。

 同じく最近、ローソンが進めてきたのがフードデリバリー事業者との提携だ。19年8月から国内のコンビニで初めて「Uber Eats(ウーバーイーツ)」と提携し、店舗で扱う約500品目を宅配するサービスを東京都の一部店舗で開始。その後、「Wolt(ウォルト)」や「DiDi Food(ディディフード)」など提携企業を計5社まで増やし、サービスの導入店舗数は 41 都道府県 2650 店まで広がっている(22年2月1日時点)。この数は競合の大手コンビニと比較してローソンが群を抜いている。

 今回の宅配調理事業では、この店内厨房とフードデリバリーとの提携を生かす。
一連のサービスの流れはこうだ。「Uber Eats」などのアプリからのオーダーを、ローソン店舗が受け取り、注文メニューを厨房で調理し、デリバリー事業者の配達員が商品を届ける。
 受注後に調理を行うため、出来たての商品を提供することができ、ローソンにとっては、店内厨房の空き時間の活用にもつながる。

外食チェーンとも手を組み
約20ブランドの出店めざす

 しかし、コロナ禍で消費者が外食を控えるなか、多くの飲食店がデリバリーサービスに乗り出している。激しい競争下でローソンはいかに戦っていくのか。

 まずは、提供メニューの拡大だ。今回の実験では、デリバリー事業者のプラットフォーム上に「ローソン飯田橋三丁目店」とは別に、「NY飯!チキンオーバーライス飯田橋三丁目店」という屋号で出店。ニューヨークの屋台飯として話題を集めている「チキンオーバーライス」を中心としたメニューを提供している。

ゴーストレストラン事業では、デリバリープラットフォームに「NY飯!チキンオーバーライス飯田橋三丁目店」という屋号で出店している

 今後はデリバリーの人気傾向を参考にしながら、中華やカレーなど提供するメニューを広げ、さらに外食チェーン店のメニューも取り入れながら、将来的には20ほどの屋号を展開したいという。魅力的な幅広いメニューを提供することで利用を取り込むほか、飲食店が少ない地域でレストランの代わりに利用される存在をめざすという。

 もう1つ、ローソンが強みとして打ち出すのが、品揃えだ。「NY飯!チキンオーバーライス飯田橋三丁目店」では、6種類のチキンオーバーライスや、フライドポテト、鶏のから揚げなどのサイドメニュー4品目のほか、ローソン店舗で扱うペットボトル飲料や酒類、菓子、日用品なども扱い、全体で約60品目を販売する。このようにさまざまな商品を合わせて購入できる利便性を提供することで差別化を図っていきたい考えだ。

メーンの商品として販売する6種類のチキンオーバーライス
ローソン店舗で扱うペットボトル飲料や酒類、菓子、日用品なども扱い、全体で約60品目を販売する

25年度にまでに
1000店舗体制めざす

 実際に「ローソン飯田橋三丁目店」の実証実験の様子を取材した。

 レジ奥にある店内厨を見ると、主な調理設備は、フライヤー、電子レンジ、炊飯器のみとシンプルで、火を使った調理は行っていない。
ローソンが店内調理のオペレーション設計でこだわったのが、スピードだ。素材はすべてキット化されており、「チキンオーバーライス」の場合、容器に店内炊飯した米飯を盛り付け、その上にカット野菜を敷き、加熱済みの鶏肉をレンジアップしてのせてトッピングを飾れば完成だ。すべてのメニューを、1人前であれば受注後から5分以内で完成できるようにしている。

専用端末でデリバリーアプリならの注文を受け取る
厨房で調理する様子。すべてのメニューを、1人前であれば受注後から5分以内で完成できるようにしている

 サービスの利用動向については、開始したばかりにもかかわらず、多い日では10件以上の注文が入っているという。利用が多い時間帯は昼と夜で、とくに13時~15時がボリュームゾーンとなっている。人気はメーンのチキンオーバーライスで、お酒やサイドメニューを合わせた2人用のセットメニューを購入する人も徐々に増えているという。

 今後ローソンはこのゴーストレストラン事業導入店を、23年2月末までに関東圏で100店舗、25年度に全国で1000店舗を視野に拡大していきたい方針だ。
ローソン新規事業本部新規サービス推進部の舟橋龍太氏は「今回の実験では従来と異なるコンビニエンスを提供することで、新しいお客さまの獲得に挑戦している。世の中の変化に対応し、検証を重ねながら新たなサービスとして育てていきたい」と述べている。

 全国に多くの店舗網を有するコンビニが、出来たて総菜の調理・デリバリーに乗りだしてくれば、商圏内の食ニーズを争奪する競争はますます激化してくると言える。ローソンのゴーストレストラン事業は今度、どれほど広がりを見せるのか注目だ。

【実験概要】
実験店舗 ローソン飯田橋三丁目店(東京都千代田区飯田橋3丁目6-5)
アプリに表示される店舗名(屋号)「NY飯!チキンオーバーライス飯田橋三丁目店」
注文受付時間 10:00~21:30