2019年6月期の売上高1兆円達成にリーチをかけたドン・キホーテホールディングス(東京都)の大原孝治社長は力をこめて「ドンキの『魔境』」を強調した。
「魔境」とは、非合理でアナログの極致とも言える、同社のワクワク・ドキドキする売場のこと。真逆にあるのは合理の極致であり、「その代表企業は米アマゾン・ドット・コムだ」と大原社長は指摘する。
デジタルコマースが急拡大する中にあっても、アナログが一方的にやられているわけではない。
たとえば、音楽の世界だ。ダウンロードやストリーミングをして楽曲を聴く人たちがいる半面、ライブ(実演)は過去にも増して強い集客を誇っている。
実際、2000年に約1670万人だったライブイベントの動員数は、2016年には4768万人になったというデータがある。
また、テレビやラジオのコンテンツとしては人気が低迷するプロ野球も、2017年度の観客動員数は2500万人を突破し過去最高を記録した。
同社は、「魔境」を磨きこみ、ネットでは味わえない有店舗の強化に努めていく。
「非合理性を追求することが結果として合理性にたどり着く」(同社)。
一方では、「魔境感やライブ感といったアナログの世界とデータ活用やスマホ対応といったデジタルの両立を志向したい」と大原社長は逆サイドにも目を向けている。
約30億円を投じて、「majica Digital Platform」を立ち上げ、店内を500歩歩いた会員にポイントを付与したり、プライスダウンオークションを実施したり、音声入力すると音声で回答してくれるバーチャルスタッフを用意するなど、デジタルの強化にも余念がないところを見せる。
大原社長は、「さまざまな仕掛けでお客さまにひたすら楽しんでもらいたい」と抱負を語った。