ホームセンター大手のカインズ(埼玉県/土屋裕雅社長)は、2014年11月29日、カインズ船橋習志野店(千葉県船橋市)をグランドオープンした。
千葉県下19号店め、全社では197号店め当たる店舗。千葉ニュータウン店(2013年開業:千葉県印西市)、浦和美園店(2013年開業:埼玉県さいたま市)に続く、「次世代型スーパーホームセンター」3号店であり、ライフスタイルを提案する小売企業として、「選ぶ楽しさ」「センス&クリエイティブ」「魅力的な価格」の実現に挑戦している。
敷地面積3万5425㎡、売場面積1万2200㎡、駐車台数は約570台、営業時間は9時から20時。人員は、222人(正社員29人、特定技能社員13人、パート社員49人、アルバイト社員〈契約社員含む〉129人)。設定商圏は習志野市、船橋市、八千代市を中心とした半径5kmの23万世帯、59万人だ。
《ライフスタイル提案》を前面に打ち出しているだけに、店内を覗くと、さまざまな取り組みがほどこされていることを確認できる。
まず、注目は「コンシェルジュ」サービスだ。
今年7月に全面リニューアルしたカインズホーム市原店(千葉県市原市)で初めて導入したサービスで、リフォームとインテリア、照明、カーテンなどを一括りにして、専任の従業員が部門横断型で部屋全体、家全体の提案をするというものだ。
コラボレーションによる開発商品が増えたことにも注目したい。
たとえば、オリーブ・デ・オリーブ(京都府/近藤敏文社長)の「Olive des Olive」や日本ヒルズ・コルゲート(東京都/ゴードン・デュメシッチ社長)の「サイエンスダイエット」ブランドとのコラボレーションによるペットウエア。プラスマイナスゼロ(東京都/熊澤隆夫社長)との協業によるデザイン性の高い家庭用品。電動アシスト自転車の「LAlala(ラララ)」(7万9800円〈税込〉)は、早稲田大学マーケティング・コミュニケーション研究所(東京都/恩蔵直人所長)との共同開発商品――。
という具合に売場をじっくり見ていくと、さまざまな企業や団体とコラボレーションしながらつくりあげた商品が次から次へと目に飛び込んでくる。
もちろん自力による開発商品も続々だ。
たとえば、これまでは1つのカテゴリーしかなかった「靴」は、「トラベル用」「ウォーキング用」「ジョギング用」「フィットネス用」に分類し、品揃えを充実。価格も幅を持たせた。
飲料の「お茶ドリンク」でも新しい取り組みがある。高価格商品の開発だ。従来の定番は「抹茶×緑茶」(500ml、58円)だったが、「凍頂烏龍茶」「八女玉露100%緑茶」「有機黒烏龍茶」(500ml、78円)の3品を新発売。売りは、高級食品専門店で扱っている商品と同等レベルで価格は約3分の1というところ。「90.2%の人がおいしいと言ったお茶」と書いたボードを使って品質を訴求を図っている。
サボテンなどの多肉植物は、「Live Green」(緑のあるくらし)として一か所にまとめておしゃれに展開。クリスマスツリー用品には、ゴルフボールより少し大きめの「キャンディーボールライト」を新たに加えた。夜間にフレームが光って見える自転車「キラリ」も自信作のひとつ…。
そして、飲食事業の子会社カインズフードサービス(埼玉県)が運営する「カフェブリッコ」では、初めてグラスワイン(200円)を販売。つまみにカナッペを揃えるなど、食生活の提案にまで乗り出している。
さて、2012年10月に竣工したカインズの新本部の入り口には、モニュメントが置かれ、土屋社長の座右の銘である《創るをつくる》と刻んだ。
同社のSPA(製造小売業)企業への不退転の決意表明であり、本部移転以降、今見てきたように、商品開発のスピードが質・量ともに上がっている。
「たくさん開発しても、取扱いアイテム数が多いので新商品は埋もれてしまいがちなんです」と若干不満げなのは土屋社長。
好調な企業の共通の特徴は手数が多いこと。以前、そんなBLOGを書いたので、「カインズは手数が多いですね。もう従業員の方にはあまり指示を出さなくても、泉のようにアイデアや商品が湧き出る企業風土ができあがったのではないですか?」と質問してみた。
http://diamond-rm.net/articles/-/10985
「そんなことはありません。手数が多いのは、(あれやこれやと)私の口数が多いからなんです」と土屋社長は笑った。