1980年代前半頃は、まだコンビニエンスストアへの参入バーが低かった。30坪ほどの売場を問屋に任せてしまえば、マーチャンダイジング(商品政策)は終了。あとは、レジを入れて、7時開店・23時閉店や24時間営業をするための人員確保に専念すれば、売上は立ったし、儲かった。
何しろ、個人商店、GMS(総合スーパー)、SM(食品スーパー)が深い眠りについている時間帯。ドラッグストアもネット販売もない時代に営業しているのだから、それだけで売れた。
お客のハードルも低かった。
学生だった私は、「どうせコンビニだから」と大きな期待を抱くことなく、定価ではあるが味はまずくない食品に納得して、コンビニエンスストアをよく利用していた。
若い男にとっては、腹が減ったと感じた瞬間に、食べ物や飲み物が調達できることが何より大事であり、それだけでよかった。
しかし、コンビニエンスストアの中には。「どうせコンビニだから」とは考えない企業がいくつかあった。
そして、「どうせコンビニだから」を脱却するために、日々、大小のイノベーションを繰り返した。
いくつかの企業は、先進的な企業の取り組みをできる限りマネすることで遅れまいと考えた。
「どうせコンビニだから」を許さなかった企業は、その後の同業態、他業態との厳しい競争を勝ち抜き、若年男性層のみならず、主婦層やシニア層を獲得し、現存するに至っている。
逆に、お客と同じく、「どうせコンビニだから」とばかりに、積極的な革新を怠った企業は、やがて淘汰されていき、先に道はなかった。