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イオンの岡田元也社長が株主総会で語ったこと

 5月28日、イオン(千葉県/岡田元也社長)の第89期定時株主総会が開かれた(@幕張メッセ国際展示場)。①アジアシフト、②都市シフト、③シニアシフト、④デジタルシフトで業容拡大中のイオン岡田元也社長は株主を前に何を語ったのか?(談:文責・千田直哉)

 

 新中期3ヵ年計画の最終年度である2016年度の営業収益は8兆円(ダイエー〈東京都/村井正平社長〉含む)、営業利益は2800億円を見込んでいる。これにウエルシアホールディングス(東京都/水野秀晴社長)と首都圏スーパーマーケット連合の営業収益1兆円、営業利益350億円が加わり、営業収益9兆円、営業利益は3000億円超になる。

 

 本日は、①ウエルシアホールディングス、②首都圏食品スーパーマーケット(SM)連合、③ダイエーの新成長戦略について話したい。

 

 ●ウエルシアホールディングスとの業務資本提携深化

 

 ウエルシアホールディングスとイオンとの関係は、2000年に前身企業のグリーンクロスコアとジャスコが業務・資本提携を締結したことが端緒である。やがて、トップバリュなどの扱いを増やし、2012年に東京証券取引所第1部に上場した。

 

 ドラッグストア市場は、この間、大きく成長した。2001年に3兆円だった規模は2013年に6兆円へと倍増。上位5社は、シェア拡大を続けており、それぞれの企業が日本一のドラッグチェーンを目指して激しい競争を繰り広げている。

 ドラッグストア市場には、医療制度や介護制度などの変化もある。また黎明期から成長期を牽引してきた経営陣の交替時期でもある。

 その意味からも非常に大きな変化の時期を迎えている。

 

 2014年3月にウエルシアホールディングスの創業者である鈴木孝之さんが亡くなられた。ウエルシアホールディングスは鈴木さんが常に先頭に立ち、非凡なるリーダーシップを発揮していた。

 将来的に1兆円規模のドラッグストアチェーンへの育成を計画していた。鈴木さんは7年間にわたって闘病生活を送り、志半ばで亡くなられた。

 

 亡くなられる前にお目にかかり、病院で会談したところ、「日本一のドラッグストア企業になるために(ウエルシアの)将来をイオンに託したい」という言葉をいただいた。

 この遺言を必ず形にしたい。

 

 現在のイオンのドラッグ事業の売上を見ると13年度は、7800億円の売上高がある。

 たとえば化粧品では2200億円と日本全体10%超のシェアを持っている。医薬品は2000億円とこちらも日本全体の10%超のシェアがある。調剤についてはウエルシアホールディングスがコンセプトとして非常に重視してきたこともあり、ウエルシアとイオンリテールの調剤薬局を合計すると1000億円あり、全国の主要調剤薬局チェーンが持つ売上の約半分のシェアがある。

 

 ドラッグ事業は、シニアシフトの一環としてさらに強化していきたい。

 

 

●首都圏スーパーマーケット連合

 

 SM市場は、過去5年間の市場規模推移を見ると、ほぼ横ばい。

 この間、コンビニエンスストアが約1.5兆円増、ドラッグストアが0.8兆円増なので成熟市場であることがわかる。

 

 食品は、競争激化に加えて、人口減や少子化、高齢化の進展によって直接打撃を受ける市場。この中で日本のSMは、コンビニエンスストアやドラッグストア、ネットなどいろいろな業態と限られた市場を奪い合う非常に厳しい状況にある。

 

 こうした状況から抜きん出て、競争に打ち勝っていくためには、同質化競争から脱せねばならない。他社とは異なる新しい世代のSMを確立しなければいけない。

 

 その実現のためには、問屋依存のマーチャンダイジング(MD:商品政策)をやめ、自社MDに挑戦することを続けなければいけない。

 その自社MDを確立するためにプライベートブランドの開発、食のSPA(製造小売業)化、あるいは食品の加工工場への投資も大事だ。また、高度にIT化された高効率の経営を実施する必要がある。

 そして、こうした巨大な投資に耐えられる企業規模を確保していかねばならない。

 

 SM市場において、日本の上位5社のシェアは22%。一方、英国は76%、と寡占化が進んでいる。日本には、依然、SM企業が1000社以上あり、非常に過剰で細分化された状態が続いている。

 

 しかし、日本だけが特別な状況でいられるわけではない。今後は、欧米のように業界再編・上位集中化が起こるはずだ。

 

 こういう問題意識の中で、カスミ(茨城県/藤田元宏社長)、マルエツ(東京都/上田真社長)と何ができるかを話し合った。

 カスミ(2014年度連結営業収益2334億円)とは2003年に、マルエツ(同3260億円)とは2007年に提携を開始。2社とも素晴らしい企業だが、バブルの崩壊やダイエー絡みの混乱があった。

 

 そして、業界全体が低迷する中で、同じ志をもって、新しいSMをつくり、首都圏でのリーダーシップを確立しようということである。

 

 2社の売上合計だけでも、単独では第1位のSM企業になる。

 また、イオンのSM事業は、この加算によって売上高2兆1000億円となる。全国に占めるシェアは13%と国内圧倒的なナンバーワンであり、さらなる成長を目指したい。

 

 都市型小型SMのまいばすけっと(千葉県/大池学社長)の成功が証明しているように、都市居住者の生活者ニーズにSMは応えられていなかった。

 しかし、都市居住者用のSMは、旧態依然としたSMでいいということではない。これからも都市居住者のニーズに十分応えられるようにならなければならない。

 

 それらを踏まえて、首都圏でのシェアを上げていきたい。

 

 これからのSM業界は1兆円、2兆円の規模での競争になるだろう。

 

 

●ダイエー新成長戦略

 

ダイエーは、1990年代後半から瀕死の状態が続いてきた。2004年からは産業再生機構傘下に入り、再生を目指した。しかし、真の再建が出来たとは言えなかった。

 

 2013年8月の子会社化以降、経営陣、労働組合と踏み込んだ協議を重ねてきた。

 恩讐を忘れる。その中で明らかなことはダイエーの従業員は長い間、成長を待ち望んできたということだ。

 

 リストラを終え、これからどのように成長していくのか?

 ① 再建から成長に転じる新計画を構築

 ② 迅速な改革の実行

 ③ ダイエー従業員の雇用確保

 

 この3点で労使ともに合意をしている。

 

 成熟市場で業態を超えた厳しい競争の中で勝っていくためには、我々自身が専門性の高い新しい企業になっていく必要がある。

 

 専門性を高めるために経営資源を集約する。実際、ダイエーとイオングループを照らし合わせると、アミューズメント事業のイオンファンタジー(千葉県/片岡尚社長)とファンフィールド(東京都/森茂樹社長)のように、かなり重複する企業や領域が多く、抜本的な整理を要する。

 

 そしてイオン・ダイエーは、ひとつのグループとして、それぞれの事業領域でのナンバーワンを目指す企業群のグループになる。

 

 今後、ダイエーは強みである食品に徹する。現在も店舗の9割は東京都、神奈川県、大阪府の都市部に位置している。

 首都圏・京阪神にダイエーの活動領域を集約。都市型の商品政策の確立に努める。九州などそれ以外に位置する店舗は、地域のグループ企業と再編していく。

 

 そして、大都市シフトの中核企業として首都圏・京阪神でSM・ディスカウントストア(DS)を大都市に特化した形で国内ナンバーワンの総合食品小売業へ成長させていく。

 ダイエーも今の形にとどまることなく、どちらかがどちらかの犠牲になって縮小していくという考えはまったくない。

 

 さて、現在、イオンのシェアは、GMS(総合スーパー)事業44%(業界1位)、SM13%(業界1位)、ドラッグストア13%(業界1位)となっている。

 グループの中で、いろいろ事業を展開しているが、それぞれをナンバーワンにしたい。

 業界ナンバーワン、地域ナンバーワンなど。そのナンバーワンの集合体としてイオンがナンバーワンであるようにしたい。