昨日の続きです。
前回まで見てきたように、SMをマーケティングの4Pに照らし合わせてみると、かつては有効に機能していた4つのPは、以前のようにしっかりとは作用しなくなっている。
ただし、混沌としているSM業界にあっても、“勝ち組”は存在する。
その差を生む要因は何なのだろうか?
混沌の中でも、頭角を現し、良い業績を残している企業のほとんどは、オンリーワン経営を実践してきた企業である。
SM業界全体の成長に相乗りする形の成長ではなく、長く自社のビジネスモデルも確立を考え、安易なモノマネをせず、業界の流行に踊らされることなく、オリジナリティを追求して、自ら市場を創造してきたのである。
オンリーワン経営企業共通の特徴は、自社で競技種目のルールを創出していることにある。
“勝ち組”は、SMというフォーマットに、従来の枠組みを超越した発想を持ち込み、「ライフスタイル提案」「食の提案」「都市型小型店舗」「EDLP(エブリデー・ロープライス)」「生鮮食品超強化型」「高質食品専門館」「消費者徹底志向」「専門特化」といった独自性を付加してオンリーワン経営戦略を編み出した。
SMの業界としての成長力は鈍化傾向にあり、もはや、業界の成長に相乗りする形での企業成長や存続はありえないだろう。
だからこそ、自社の独自性を前面に押し出すことが求められている。
自社で競技種目のルールを創出するに際してのキーワードは、無限に存在する。
たとえば、①地域超密着、②カテゴリー特化、③SPA(製造小売業:Speciality store retailer of Private label Apparel)、④インターネットビジネス、⑤世代別商品政策…といった具合だ。
また、4Pの切り口を再考することでも新しいルールを創出することはできる。
①PLACE(立地)を根底から見直した「まいばすけっと」、セブン‐イレブン・ジャパンの②PRICE(価格)政策は低価格一辺倒というわけではないし、③PRODUCT(店舗及び商品)にも「調理時間でくくった売場」「ビジュアルプレゼンテーションの充実」「プライベートブランドの強化」などの方法はある。さらには、④PROMOTION(販売促進)では、スマートデバイスやハウスカードの活用など新しい動きも出ている。
もちろん、独善的に自社で競技種目のルールを創出するだけでは、無意味であり、それが市場に受け入れられなければ仕方ない。
「わが社は現存人員で目いっぱい働いており、競技種目のルールを創出するだけの余力がない」。
こう考えるSM企業の経営者も、少なくないだろう。しかしながら、時間も余力もないのは、どの企業も同じことだ。
厳しい環境の中にこそチャンスは多く存在する。
2014年4月の消費税増税を機に、業界再編が一気に進むと見る関係者は多い中で、問題は、これをやるのかやらないのか、その2者択一なのである。
『チェーンストアエイジ』誌2013年11月15日号(明日発売)の特集は「ここから先は未知の領域 スーパーマーケット混沌」です。是非、ご一読ください。