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過去があるから、現在と未来がある

「いまはもういない選手や監督がいたから、今日の日本一がある」――。

 11月3日に巨人との日本シリーズを制し、プロ野球日本一に輝いた東北楽天ゴールデンイーグルスのファンが語っていた。

 

 素晴らしい考え方だと思う。

 優勝したチームというのは、とかくその時に袖すり合わせたメンバーの功績が語られがちだ。ヒーローもその中に見出そうとする。

 

 もちろんその通りだとは思う。シーズン24連勝を記録したった一人で24の“貯金”をつくった田中将大選手やルーキーイヤーに15勝8敗という安定感を見せた則本昂大選手を始めとする選手の活躍は称賛に値する。

 

 しかしながら、このファンの言うとおり、勝てない時代があったから今の栄光がある、という見方も大切だ。

 初代の田尾安志監督がいて、野村克也監督、マーティ・ブラウン監督がいて、山﨑武司選手がいて、福盛和男選手、関川浩一選手、飯田哲也選手、礒部公一選手、岩隈久志選手、岩村明憲選手、一場靖弘選手…。たくさんのOBがいたことが2013年の栄冠につながったのだと思う。

 

 OBたちの全員が、チームにプラスの影響を与えていたのかどうかは分からない。しかし、たとえ反面教師であったとしても、何らかの影響をもたらし、チームのDNAのどこかに組み込まれていることは間違いない。9年間の歳月を経て、それらが結実したのである。

 

 こうした経緯は、楽天のように2005年からプロ野球に新規参入した球団だからこそ、よく見える。

 

 ある程度実績を残した組織は、つい全てが自分の実績であり、そこにいま在籍しているメンバーの功績と勘違いしてしまい、天狗になってしまうようなところがある。

 けれども、組織も生き物なのであり、過去が現在や未来をつくっていることを忘れてはいけないだろう。