数年前にコストコホールセール・ジャパン(以下、コストコ:神奈川県/ケン・テリオ社長)の脅威について、某食品スーパーマーケット(SM)企業の社長に話したことがあった。
コストコは言わずと知れた会員制ホールセールクラブ(MWC)だ。
現在、日本での展開店舗数は13(札幌〈北海道〉、幕張〈千葉県〉、金沢シーサイド〈神奈川県〉、川崎〈神奈川県〉、入間〈埼玉県〉、新三郷〈埼玉県〉、前橋〈群馬県〉、座間〈埼玉県〉、多摩境〈東京都〉、尼崎〈兵庫県〉、京都八幡〈京都府〉、神戸〈兵庫県〉、久山〈福岡県〉)。この3月22日に北九州(福岡県)、23日に広島店(広島県)を開業するとともに、今夏には中部空港店(愛知県)、つくば店(茨城県)、千葉ニュータウン店(千葉県)の出店も明らかにしている。
某社長に話したのは――。
コストコは、コンビニエンスストア(CVS)の100倍の売場面積(=約1万㎡)にCVSとほぼ同じ3500~4000品目しか商品を揃えない。個人の年会費は1年間、4200円と高額。にもかかわらず、団塊ジュニア世代を中心に連日、消費者が押し寄せ、土日には「コストコ渋滞」なる現象を周囲の道路に引き起こす。平均客単価は1万2000円から1万3000円(『チェーンストアエイジ』誌調査)に上る――。
店舗高さ8m、通路幅3mの倉庫をアメリカナイズされた大型カート(長さ95㎝×幅65㎝)で買いまわる。その非日常が楽しい。扱っているのは大型パックなどの高品質低価格、ローカル重視の商品政策で日本有名メーカーと協業している。自社ブランド「KIRKLAND」も上質低価格。さらには「TRESURE HUNTING」(宝探し)感覚で売場には何か発見がある。ショッピングをイベント化(帰省、盆・正月の支度、ママ友の集い・・・)している、などなど。
ところが、そんなことを熱弁する私を尻目に某社長の反応は冷たかった。
「SMとMWCでは業態が異なるので競合しない」と木で鼻をくくったような返事があるばかりで、コストコの魅力を熱く語る自分だけが浮いてしまった。
しかしながら、その後、そのSM企業が実際にコストコと競合してみると結構な数のお客を奪われたという。
1年後に某社長と再び会うと、「いや、君の言うとおりだった。今は対策を考えている」と大慌ての体だった。
『チェーンストアエイジ』誌2013年3月15日号(p69)では、『コストコ通』のBLOG管理人のコス子さんの寄稿を掲載している。
その中に「(コストコの利用を始めてから)よほどのことがない限り近所のSMに行くことがなくなった」とあるほどだから当然といえば当然だろう。
こうした話を紹介するまでもなく、やはり、小売企業は、他業態にも目を向ける必要がある。
そして、現在、コストコの時と同様、その脅威について訴えているのは、アマゾン・ドット・コムである。
ところが私の話し方が悪いのか、同じように熱弁をふるっても、大抵の経営者は「アマゾンって、ネット書店でしょ?」「当社のドミナントは田舎だから…」くらいの鈍い反応しか示してくれない。
「もしアマゾンが日常生活で必要な生鮮食品を本格的に扱い始めたら…」と考えれば、夜も眠れないはずなのだが。