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悪夢

 就職難の現代ではほとんど考えられないことだが、私の学生時代には、まだまだ社会は安穏としていた。希望する会社に就職するために“就職浪人”することが許される生ぬるさが残っており、私もそこに甘えてしまった。

 

 さて、留年することを決めたはいいが、成績の良さが災い(これホントです)して、「必修科目の語学(英語)を意図的に落とさなければ学校に残ることができなかった。

 そのために大学5年生の今頃の時期に卒業を賭けた英語の試験を受けるハメになった。

 しかしながら、①就職活動に明け暮れ授業に出ていないこと、②同級生がみんな卒業してしまって、ノートを見せてもらえなかったことから、まったく自信がなかった。

 結果を先に言ってしまえば、最終試験に備え、しっかり勉強をしていき、見事、パスしたけれども、実は、この時のことが数年に1度くらいの割合で今も夢に出てくる。

 シュチュエーションは、卒業を賭けた英語の試験があるのにまったく勉強していない――。どうしよう…。というところで目が覚める、というものだ。

 こんな悪い夢を見るのは自分だけだろう、と誰にも言えずにいたところ、日本リテイリングセンターの故渥美俊一先生も同じだった、と聞いてちょっとほっとした。

 渥美先生が旧制第一高等学校から東京大学に一年の浪人期間を経て入学する、というのは『チェーンストアエイジ』誌で連載中の「革命一代」(作・樽谷哲也)に描かれているとおりだ。

 

 渥美先生の場合は、その東大入試に失敗する悪夢なのだという。

 外向きにはあれほどの威厳を見せ、威圧感のあった渥美先生にしても、気弱な側面があったのかと知ってびっくりだ。人は見かけによらぬものとはこういうことを言うのだろう。

 また、1000人強を集めたセミナーの受講生を前に声が出なくなる夢もよく見たのだという。