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個店対応の時代に?

 西友(東京都/スティーブ・デイカスCEO〈最高経営責任者〉)、イオン(千葉県/岡田元也社長)、イトーヨーカ堂(東京都/亀井淳社長)…大手だけではない。中小、零細の小売業も低価格競争に参戦して、コモディティ商品の値下げ合戦が繰り広げられている。

 いまや、コモディティ商品は、レッドオーシャン。行けども行けども、そこは“安売りの海”、まさに血みどろの戦いだ。

 

 ただ、安売り原資を確保できない中での低価格競争は、各企業の財務諸表を傷つけるだけだ。そこで、多くの小売企業は、チェーンストアであっても、競合状況に応じて、個店のみでの対応で打開を図っている。

 たとえば、大阪府にあるA社のB店のケースだ。

 B店は、オープンしたばかり。開業後1週間までは好調に推移していたが、その後、売上に異変が起こった。調べてみると午前中の売上が激減していた。さらに、会員カードのデータを分析すると、急激に落ち込んでいたのは60代のお客――。商圏内の競合店をチェックしてみると、《生鮮カテゴリーキラー》が毎日午前中に安売りセールを実施しており、そこに随分食われていることが分かった。《生鮮カテゴリーキラー》は端物買いなど独特の仕入れをして、“売り切れ御免”をセールストークにしていた。

 そこで、A社が対抗策として発案したのが、B店のみ毎日、朝市を開くことだ。超低価格を打ち出し、《生鮮カテゴリーキラー》同様、午前中のみの「売り切れ御免!」。すると、客数は一挙に以前のように戻り、いまは予算の150%で推移している。

 

 一方、首都圏に本部を構えるC社のD店。たった2㎞しか離れていない自社のF店とはチラシの内容を変えている。一律値下げでは、採算が合わないため、競合状況に応じて個店のみで対応する、という判断からだ。

 そういえば、1000店舗以上を展開するホームセンター企業のコメリ(新潟県/捧雄一郎社長)は、店舗の競争状況に応じて、5つの売価を持っていると随分前に聞いたことがある。

 

 1物5価だ。

 実に、こまめな価格対応をしていると当時は感じたものだが、いまや100店舗を展開する企業は競争状況を見据えて、1物100価となっても仕方がない時代なのかもしれない。