“中東の笛”とは、国際的なスポーツイベントにおける中東出身の審判の理解不能なレフリングを指す。
もっとも有名なのは、ハンドボールである。
アジアハンドボール連盟がクウェートの王族によって事実上支配されていることから、試合日程や審判選定、試合判定がたびたびアラブ有利に進められてきた。
その不可解なやり方の象徴として話題になったのが“中東の笛”だ。
ただ、“中東の笛”とは、アラブや中東の専売特許ではない。
たとえば、ボクシングには、ホームタウンデシジョンという言葉があり、地元選手に有利な判定が出るのは当たり前の話だ。
また、スポーツには本当の誤審もつきものだ。
2000年のシドニー五輪柔道100kg超級決勝戦。篠原信一選手(現:柔道男子日本代表監督)は、ダビド・ドゥイエ選手(フランス)に仕掛けた返し技「内股すかし」を取ってもらえず、ミスジャッジによって金メダルを逃した。
そして、こうしたことが繰り返されるたびに、日本のメディアは、誤審箇所を何度も何度も流し、判定の誤りを指摘し、「あれさえなければ…」と絶対に覆ることのない判定についてファンを巻き込んで悔いてきた。
さてさて、話は変わって、この6月12日に行われた「2014 FIFAワールドカップブラジル」のアジア最終予選のオーストラリア戦――。
サウジアラビア出身の方が主審をしていた関係からか、“中東の笛”の嵐だった。日本5枚、オーストラリア2枚、合計7枚の不可解なイエローカードと超常識判定が飛び交い、2人の退場者を出すほどの荒れ模様。結果は、周知のように1対1のドロー。
日本のメディアやファンは、これまでと同じようなことを繰り返すのかな、と思っていたところ、「アウエーの洗礼、“中東の笛”も跳ね返し、引き分けに持ち込めたのは大きい。次のイラク戦も頑張れ!」といった論調が多かったことに驚いた。
サッカーの日本代表が強くなったことの余裕によるものか、日本のメディアやファンが成長して大人になったのか、原因は明らかではないけれども、今回だけの出来事とならないように願いたい。