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2つのオーバーストア

 周知のように、オーバーストアとは店舗飽和のことだ。

 

 たとえば、人口10万人の街には、必要商圏人口1万人の店舗ならば10店舗を出店する余地がある。これが10店舗以上になることがオーバーストアであり、街中に店舗数が増えるごとに採算割れを起こす店舗も増えていくことになる。

 

 日本の人口が1億2000万人だとすると、必要商圏人口2500人程度の《コンビニエンスストア》であれば4万8000店舗。同3万人程度の《ホームセンター》であれば4000店舗。同100万人の《百貨店》であれば120店舗…といった具合に限界の店舗数に達するまで、多くの小売企業は、こぞって大量出店を続け、市場を店舗で埋め尽くしてきた。

 

 これが出店によるオーバーストアであり、大量出店の結果として市場は飽和に陥っていった。水に砂糖が溶けなくなるまで溶かし続けたような状況だ。

 

 ところが近年は、少子高齢化の流れを受けて、需要縮小・人口減少によるオーバーストアという状況も生まれてきた。

 すなわち、必要商圏人口1万人の店舗が10店舗存在していた街の人口が8万人に減少し、2店舗が淘汰されてしまうというものだ。新規出店による競争激化があるわけでもないのに、既存店舗の採算が合わなくなっていくのである。

 

 これは砂糖水の水分が蒸発してしまい、飽和に達したような状態だと言えるだろう。

 

 そして、同じオーバーストア状態でも両者では、打ち手は大きく異なり、後者の場合は、攻撃一辺倒から防御の発想に転換する必要がある。

 市場が縮小する中では、出店に注力してもあまり効果はなく、むしろ既存店舗の“品質”変更が重要になる。