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日本スーパーマーケット協会川野幸夫会長 2011年流通業界雑感(1)

 日本スーパーマーケット協会(東京都)の川野幸夫会長は記者会見を開き、2011年を振り返った(12月15日@日本スーパーマーケット協会本部)。以下は、記者会見の抄録(談・文責:千田直哉)。

 3月の東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故後の日本を目の当たりにして感じたのは、日本の政治家、役人、大企業のトップには、リーダーシップのとれる人物がいないということだ。
 

 戦前であれば、「日本軍は、兵隊は強いが、将校は無能」という言われ方をしてきた。

 今も、その当時とほとんど変わっていないことが明らかになった。震災後の日本国民に対して世界中から称賛の言葉が次々と届く一方で、事後処理の遅れはリーダーシップのとれる人物が日本にはいないことを露わにしてしまった。

 そこにはいろいろな理由がある。突き詰めれば、①リーダーを育てるための仕組みがない、②リーダーシップを発揮できる仕組みがないという2点に尽きる。

 このままでは日本は、ますます衰退していくだろう。

 だからこそ、早急にリーダーシップのとれるリーダーを育てるための仕組みづくりをしていかなければならない。

 同じ課題は、我々企業人や流通業界人にも付きつけられている。

 私が会長を務めるヤオコー(埼玉県/川野清巳社長)は、“個店経営”を標榜しているので、リーダーシップを持つ店長や部門長をいかに育てるかということを喫緊の課題にして改善に努めているところだ。

 さて、東日本震災後直後の食品スーパー(SM)業界は、被災地内外において、大変頑張った。

 まずライフラインとしての役割を果たし、それに加えて、豊かな食生活、ふだんの生活の充実のために何をしなければいけないかを考え具体的に動いた。

 そうした中でパート、アルバイトを含む従業員1人1人が食品スーパーの本来持っている役割の大事さを実体験として理解できたと思う。

 たとえば、我々がお客さまからいかに頼りにされているかについて身をもって実感することができたはずだ。

 それは我々の業界で働く人たちの働きがいや生きがいに大きくつながる。

 その意味では大変不幸ななかではあったが、SMで働いている人たちにとっての良い経験にはなっただろう。

 また、世間一般も我々SMの役割を見直してくれた。SMの重要性を再認識してくれたという意味においても、業界全体として、励みになったと考えている。

 もちろん課題も浮き彫りになった。

 とくに情報不足、情報伝達手法の不備で多くのお客さまに不安を与えた。

 また、サプライチェーンが分断され、モノ不足を惹起してしまった。

 我々は、そのことについて反省して将来に向かっての打ち手を施すべきだ。

 その意味から言えば、今後は製配販の連携がさらに重要になるはずだ。2011年6月に経済産業省が音頭を取って、「製・配・販連携協議会」がスタートした。サプライチェーン・マネジメントの抜本的なイノベーション、改善を図り、もって産業競争力を高め、豊かな国民生活への貢献をめざすものだ。その達成に向けては、従来以上に製配販のコミュニケーションを密にすることが重要になる。

 世界人口が70億人を突破したこれから、新興国の需要は拡大し、食糧をはじめとした原材料不足が起こる可能性が大きい。

 しかもヨーロッパでは、ギリシアに端を発した債務危機がユーロ圏内に広がり、ソブリン(カントリー)リスクが大問題になっている。日本も対岸の火事と安穏と構えていられる状態ではない。将来、日本の国債がクラッシュする可能性があることが盛んに言われている。

 その時には、我々のようなSMのサプライチェーンも大きな打撃を被ることになる。

 そういう事態も含めて、お客さまに正確な情報を伝え、物の確保を含め、サプライチェーン全体で何ができ、何の準備しなければいけないのかについて考えなければいけない。

 東日本大震災後は、大本営発表が続き、政府のアナウンスに対する国民の信頼がなくなっているから我々の業界がいかに、お客さまに信頼されて、適切なアナウンスをし続けられるかについてもしっかり考えなければいけない。(続く)

【日本スーパーマーケット協会概要】
設立:1999年(平成11年)7月12日
目的:スーパーマーケットの健全な発展と普及を図ることにより、 わが国食料品流通の近代化・合理化を促進するとともに、 より豊かな国民生活の実現に寄与する。
会員数:通常会員100社、賛助会員497社
(総店舗数 7113社 総売上数 約6兆2659億円:2009年9月4日)