流通外資を迎え入れてばかりで、自らの海外進出の腰は重い日本の流通業。ようやく一部の大手企業が、中国や東南アジア諸国には牙城を築き始めた。
ところがもう少し離れたインド市場となるともうお手上げ。西欧諸国の小売業が虎視眈々と直接投資の機会を睨み、進出しているのに対して、まだ動く気配さえない。
インド市場は人口11億8000万人を抱え、中国に次いで第2位の規模。年収150万円から600万円の中産階級が1億8000万人も現出するなど、少子高齢化、人口減少に疲弊する日本との比較では夢のような世界だ。
にもかかわらず、流通インフラは皆無に等しい。物流網が整備されず、コールドチェーンも構築されていないから、青果物の廃棄は30%弱に及び、国の生産性を著しく下げている。
日本には、欧米を遥かに上回る生鮮食品の鮮度管理技術がある。「資生堂」「カシオ」「セイコー」「トヨタ」「シチズン」など売るべき商品も山ほどある。しかも、まだ西欧諸国の直接投資は始まっていないのだから、日本の流通業は出て行くことを検討してみる価値はある。
(『チェーンストアエイジ』誌2011年1月15日号)