『ビッグコミック』誌11月10日号(10月25日発売)に連載中の『ゲゲゲの家計簿』(水木しげる作)を読み、昨年NHKで放映されて大好評だった『ゲゲゲの女房』にかぶせてみると、水木さんが過ごしてきた時代の壮絶なメディアの変遷史を理解することができる。
水木さんは、紙芝居を振り出しにマンガを描いていたけれども、紙芝居がどんどん斜陽になっていく。
そこで活躍の場を当時、流行の気配を見せていた貸し本屋に変え、貸し本専用の漫画家になった。
ところが、貸し本屋のブームも去り、週刊マンガやテレビの時代が到来する。
水木さんは、ここもうまく乗り越え、目まぐるしく変わるマンガメディアを隆盛に合わせて波乗りしていった。その間、水木さんの仕事である漫画家という仕事自体は、それほど大きく変わったわけではない。
ということは、いま起こりつつある紙媒体からインターネットメディアへの主役交代の流れは少しもおかしなことではないことが分かる。メディアとは興亡を繰り返すものなのである。
しかも、大きな変化には大きなチャンスがあるのだから、われわれ出版に携わる者としても、水木さんのように楽しく渡り歩くべきであり、恐れていてばかりではいけない。