東日本大震災における北海道地区の直接被害は、漁船や沿岸の住居に約350億円あったと言われるが、地震や津波の直撃を受けた太平洋側との比較で言えば、それほど大きなものではない。
アークス(北海道)の横山清社長は、「全203店舗中3店舗を休業させたが大したことではない」と振り返った。
ところがここにきて、間接的な被害が顕著になっている。
ひとつには中国人など外国人旅行客の著しい減少である。福島第一原発の暴走問題を端緒に、世界の多くの国々が日本への渡航自粛勧告が出したためである。
2011年3月の新千歳空港への外国人入国者数は1万2400人(速報値)であり、前年同期の約40%減となった。4月も欠航便が相次ぎ、この傾向に歯止めはかからない。
まさに国際的風評被害である。
「本土(=本州)に本社がある企業の役付きが北海道に来なくなったので宴会が減りました。週末の宴会はガラガラですよ。」――。
伏し目がちに語るのは、北海道一の繁華街すすきのにある居酒屋の店長だ。電力が余っているにもかかわらず、自粛、自粛でネオンの照度は落ち、暗い世相をさらに暗くしていた。最近、ネオンの煌めきは、復活を果たしたが戻らないないのは客足だ。
チェーン店やキャッシュリッチな外食企業は、まだ余裕をもって、閑古鳥の鳴く状況を静観できるが、資金を自転車操業している零細飲食店には閉店を余儀なくされているところも少なくない。
“日本全体の5%規模”と言われる北海道地区も、直接的には大きな被災を免れたというものの、こうした影響を受けている。
東日本大震災は、まだまだ日本全土に別の被害を与えそうな様相を呈している。
流通業は、流れに身を任せているだけではいけない。新しい仕掛けを編み出し、実践することがいまこそ求められている。