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消費者が店舗の都合に合わせるお店

「何の取材よ?」

 

 スーツ姿で店内にカメラを向ける私の肩を叩いたのは、60歳前後のおばちゃん。

 

 「あのう、雑誌の取材です」と答える私に、「ワタシもね、たまには、キレイなお店に行きたいんだけど、仕方なくこの店に来ているのよ」と問わず語りに話してきた。

 

 この店――。

 というのは愛知県を本拠に9店舗を展開するタチヤ(森克彦社長)緑神沢店だ。

 

 おばちゃんの言うとおりでお世辞にもキレイとは言えない店だが、何しろ安い。森社長は、廃棄・値下げロス分を売価に転嫁することを潔しとしていないからだ。「ある高級スーパーはうちと同じ問屋から仕入れた同じエノキを1つ300円で売っていた。うちは2個100円で売っていたけど…。そんなことの積み重ねがお客様からの支持につながっているんだと思う」(森社長)。

 

 生鮮食品の売上構成比率は80~85%。毎朝、それぞれの店舗の部門担当者が河岸に出向き、仕入れて売り切るから商品は新鮮そのものだ。

 売上高販売管理費率13.3%、粗利益率21.6%。

 売上高純利益率は4.6%と『チェーンストアエイジ』誌9月15日号で発表した食品スーパー部門(322社)ランキングでは第2位に位置する。

 

 全店舗ともに水曜日定休、18時閉店なので、消費者が店舗の都合に合わせてやってくる。「ウチはファミリーがターゲット。子供たちが夕飯を我慢できるのは19時が限界だから、18時に店を閉めても支障はないと思っている」(森社長)。

 

 今日の流通業は、“オーバーサービス”。

 

 どれだけ、店舗が消費者に合わせればいいのかと、やきもきしていただけに、そのひとつの答えを見せてもらった気がした。

 

 帰り際に、とうもろこし(北海道産:3本298円)、すだち(徳島県産:10個150円)、しめじ(新潟県産:398円)を購入して、店外で仲間を待っていると、さっきのおばちゃんが声をかけてきた。

 

「あんた、独り者? その、とうもろこしは、電子レンジで4分くらいチンするとおいしく食べられるからやってごらん」とアドバイスしてくれた。

 

 見れば、おばちゃんのレジ袋内にも十数点。

 

「本当にたまにはキレイなお店にいきたいのかなあ?」と不審に思っていると、「ね、いいお店でしょ!」とまるで自分のお店のように自慢をして駐車場に消えて行った。

(詳しくは『チェーンストアエイジ』誌2009年11月1日号で)