10月に入ると中間決算発表会が目白押しとなり、毎日、兜町や馬場先門辺りを往来する生活が始まる。60分ほどの時間を通じて、経営者が上期の数字を開示し回顧するとともに、下期の所信表明を語る場である。中には、4幕構成の『カルメン』さながらの“大作”のような政策発表もあり、「なるほど、なるほど」と納得しながら、言葉の理解に努めている。
決算発表会における次期政策説明は、われわれ記者に対しては“大作”でも一向に構わない。
ただ気になるのは、これだけの“大作”を社内でいかに噛み砕き、従業員に理解してもらい、実践化していくのかということだ。
それというのも、理解したつもりになっていた私も、会の終盤戦辺りに差し掛かると、ところどころの記憶を喪失していることが多いからだ。
“大作”的な政策は対外的には格好いいかもしれないけれども、実践には向いていないようなところがある。所詮、人間は、「あれもこれも」と詰め込んでは動けず、「あれかこれか」くらいしか正確には実行できないものだ。
問題点をすべて一気に解決したいという経営者の思いは察するに余りあるが、焦らずにひとつひとつを着実に潰していく姿勢も重要だろう。
(『チェーンストアエイジ』誌2010年10月1日号)