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2010年の注目人(2) 大黒天物産 大賀昭司さん

 岡山県倉敷市――。

 ディスカウントストア「ラ・ムー」や「ディオ」を展開する大黒天物産(大賀昭司社長)の社長室には、今後の出店計画が張り出されている。

 中でもひときわ目立っているのは、2010年3月下旬の出店を発表している「福岡県」の3文字だ。大黒天物産は、今春、福岡県遠賀郡水巻町に「ラ・ムー水巻店」(仮称)を開業し、九州初進出を果たす。

 

 大賀さんは、この進出を、(1)1986年の創業、(2)2003年の岡山県外初進出の「ラ・ムー加古川店」(兵庫県)出店に次ぐ、3つめのターニングポイントと位置付け、気分の高揚する毎日を過ごしている。

 「久しぶりにわくわくしています。加古川市に進出したときは『本当に大丈夫か?』と何度も自問自答を繰り返しながらのものでした。しかし結果として見れば、あの決断がなければ、いまの当社はありません。本州の企業が九州に進出するとうまくいかないと言われていますが絶対に撤退はしません。不退転の決意で臨みます」。

 

 大賀さんは、普段は一貫して柔和な表情を崩さないが、内部には尋常ではない闘争心を抱えている。

 そのことを垣間見せた出来事が「1円戦争」だ。

 2008年12月に開業した「ラ・ムー赤穂店」(兵庫県)と競合店との抗争である。

 2店舗間では低価格競争が繰り広げられ、うどん1玉の価格が徐々に下がり、ついに1円に。「ラ・ムー」は2玉を1円。競合企業もついてきた。

 さらに「ラ・ムー」は3玉を1円にする。その翌日から、競合企業は追随できず、売価をもとに戻してしまった。

 「低価格は、当社のアイデンティティなのです。だから、ここでは絶対に負けません。負けてはいけません」。

 大賀社長は、温和ながらも、ギラリと光る眼光で、そう言った。

(詳しくは『チェーンストアエイジ』誌2010年2月15日号で)