9月6日、グランドプリンスホテル赤坂「五色の間」にて渥美俊一先生のお別れ会がしめやかに行われた。
というのは嘘で、日本リテイリングセンター(東京都/渥美田鶴子代表)と日本チェーンストア協会(東京都/亀井淳会長)との共同開催になった会合には、日本全国から約3000人の参列があり、故人を盛大に偲ぶ大会合となった。
さかのぼる、9月3日、私のところに「小津商店」の社の封筒で手紙が届いた。
差出人は、渥美俊一先生の父半次郎さんが勤めていた三重県松阪出身の小津産業(当時は大橋商店)の取締役相談役北村純夫さんである。
『チェーンストアエイジ』誌2010年9月1日号の連載『革命一代』で大橋商店について触れたため、作者の樽谷哲也さんが掲載誌を送ったことに対する礼状だった。
実は、手紙が届く2週間ほど前に北村さんから私宛に電話があった。
「樽谷さんと千田さんの名義で雑誌が送られてきているが、頂くような心当たりがまったくない。どういうことか?」
以前取材で小津産業にお世話になったことなど、送付した理由を説明したところ「なるほど」と納得してくれ、納めてくれていたのである。
いただいた手紙は縦書きの手書き。渥美先生の父と小津産業との深い縁に思いをはせるとともに、松坂伊勢商人の血脈を感慨深く思うという内容だった。
私が感激したのは北村さんの律義さである。雑誌を受け取る前にその意図を確認。ひとたび受け入れたところで、誠意のこもった礼状を送る。
半世紀も前ならば、当たり前のことだったのかもしれない。しかし、電話や電子メールが定着している今の時代には、できそうでなかなかできないことである。
そして、その律義さに伊勢松阪商人の伝統と根強さを見せつけられた気がした。