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年寄りは変わらない

 「年寄りは変わった」。

 多くの人たちが口をそろえる。

 

 カクヤス(東京都)の佐藤順一社長は、「高齢者は食が細くなるというのはウソだよね」と断言する。1日に大びんのビールを5本飲みほしてしまう酒豪の高齢者を毎日目の当たりにしているからだ。

 

 東京都武蔵野市では、79歳のお婆さんがスリを働き、逮捕された。被害にあったのは62歳の女性というから、「老老介護」ならぬ「老老犯罪」だ。

 

 団塊の世代は65歳を迎えようとしているけれども、パソコンやスマートデバイスにばかりに時間を費やす若者たちよりもよっぽど“肉食”で生気に満ちた顔つきをしている。

 

 私が幼いころの「還暦」と言えば、よぼよぼの老男老女、という記憶がある。けれども、今年還暦を迎えた2人のマラソン仲間に私は負けっぱなしだ。

 

 こんなふうに考えてみると、いまの年寄りは、昔との同年齢比較では元気そのものだ。「年齢」の8掛け、または「年齢」マイナス10~15歳というのが正直な感想だ。

 

 ただ間違えてはいけないのは、たとえ寿命が延びようとも、昔よりは元気でいようとも、人間には、知力・体力ともに衰える日が必ずやってくるということだ。

 

 「年寄りは変わらない」。

 

 若く元気な老人たちの登場によって、それが10年か15年先延ばしになったに過ぎない。

 

 しかも、これまで見たこともないようなカタマリとしての老人たちが一気に衰えるのだから、これには社会としての用意が必要になる。

 まだ見ぬ世界のことなので混乱は避けられないだろうが、悲観することなく前向きでいたい。商機もいたるところにあるはずだからだ。