メニュー

“素人”社員、将来を担う

 「未来型食品スーパー」を模索したいと話すのは、首都圏に食品スーパー98店舗を展開するサミット(東京都)の田尻一社長だ。

 

 「当社がドミナント展開している首都圏エリアの消費者も大きく変わってきた。60代~70代の消費者の比率は確実に上昇し、極端なケースでは50%以上の店舗もある」。

 

 そこで2012年3月期は、「革新元年」をテーマに、MD(商品政策)革新に努めるという。

 「5~10年後に備えたい。新しい売場、新しいMDを試行錯誤して、新生サミットのひな形を構築したい。結果として、いまの売場と変化がないかもしれないが…」と謙遜気味に話すのは田尻社長。

 

 同社は「未来型食品スーパー」を開発するために精鋭12人で構成されるマーチャンダイジング革新プロジェクトを新設している。

 

 興味深いのは、従来の考えを払拭するために、情報システム部や経理部など、営業部と無縁の従業員を多く投入したことだ。

 期待の1号店は10月オープンの新店でお目見えすることになる。

 

 一方、こちらはヤオコー(埼玉県/川野清巳社長)。

 3月8日に組織改正と人事異動を実施した。目玉は、生鮮強化の方針を鮮明に打ち出し、とくに鮮魚強化を表明したことだ。

 

 「食品スーパー企業の中で我々の生鮮食品の売上高構成比率は決して高くない。だから、長く販売部長をしていた新井紀明取締役を生鮮部長に異動させた。従来の川上発想では、当社を変えることはできないと考え、生鮮食品ではずぶの素人を起用した」と組織変更と人事異動の主旨を解説するのは川野社長だ。

 

 「いまのやり方を継続することで、漸増はするかもしれないが、大きな伸びは期待できない」という考えが裏側にある。

 結果は確実に表れており、直近の2か月で鮮魚部門の売上は良化し、2年ぶりに対前年比がプラスで推移し始めた。

 

 2社の有力企業の動きから言えるのは、組織や人員を固定化してしまうと、発想も固定化してしまうということ――。

 岡目八目。素人には素人の強みがあるということなのだろう。