ジョイフル本田千代田店(群馬県)に行った。
売場面積約3万5000㎡に約22万アイテムを集める超特大の大型ホームセンター(HC)だ。
ジョイフル本田(茨城県/本田昌也社長)は、日本の大型HC企業の草分け。1998年にニューポートひたちなか店(茨城県ひたちなか市、売場面積2万8998㎡)をオープンして、HC業界における店舗大型化に先鞭をつけた。
その後も、「1店舗巨大主義」を掲げ、新田店(群馬県太田市、3万1182㎡)、千葉ニュータウン店(千葉県印西市、約4万㎡)、宇都宮店(栃木県宇都宮市、約4万㎡)、瑞穂店(東京都西多摩郡、約2万7800㎡)と巨艦店舗を出店してきた。
ジョイフル本田のHCは、その規模、品揃え、プレゼンテーション…とこれまで世界一と称賛され続けてきた歴史がある。
実際、過去の既存店舗では、1店舗1日当たりの売上高が世界一位というグローバルブランド商品も数多く存在した。
その最新店舗である千代田店は、東日本大震災直後の3月14日にオープン。私が訪問したのは約3か月半後のことになる。
店舗外観は既存店舗とほとんど変わりないが、店内の様子は大きく変わっていたので驚いた。
これまでの同社の店内は、売場と什器に商品を目いっぱい詰め込み、迫力を演出し、時に、提案型の売場を差し込むことで、お客を魅了してきた。
下手なたとえを言うなら、田舎に住むおじさん宅の歓待だ。ちゃぶ台に一杯用意された食事を「さあ、食べなさい。食べなさい」と笑顔で勧めてくれるような雰囲気だった。
しかしジョイフル本田千代田店は、これまでのジョイフル本田とは大きく一線を画する。
什器の高さは、4年2か月前に出店した瑞穂店よりもさらに下げ1200㎜を主体としている。見晴らしがよくどこに何があるかが一見でわかる。「どこからでも売場全体が見渡せ、商品も取りやすい」と女性客には評判もすこぶる良い。
しかしながら、長くジョイフル本田ファンを自称してきた私にとってはちょっと拍子抜けだった。
確かに見晴らしはよく、22万アイテムがお行儀よく上品に並んでいるのだが、これまでのジョイフル本田の特徴であった豊富な在庫量で売場から湧き出すあふれるばかりのパワーがなくなってしまったような気がした。
おじさん宅でガッツリ、いろいろなモノを食べようと意気込んで訪問したら、出てきたのは1人前の品の良い懐石料理だった、というがっかり感だ。
振り返ってみれば、瑞穂店出店以降、ジョイフル本田にはいろいろことが起こった。
外目から見て、一番大きかった出来事は、三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタル(東京都/矢坂修社長)と資本提携をしたことだろう。
その裏側には、ジョイフル本田の事業継承と相続問題があると言われ、株式公開も2年後には行われると噂されている。
そして千代田店の店内から憶測できるのは、たぶん、株式公開をうまく進めるためには、経営数値の改善が必要だったということだ。
とくに「我慢の経営」ということで、1年に1個も売れないような商品を置き続けてきた同社の経営戦略や経営姿勢は株式を上場するに当たってはプラスには作用しそうにない。
これまでの同社の路線を修正して、商品回転率を上げ、ROA(総資産利益率)を上げ、経営数値を一変させるために、在庫を減らした結果が、今回の売場となってしまったのではないだろうか。
時代の流れと言えば、それで済んでしまうかもしれない。
しかし、武骨でもあり独自性に富んだ商人であった往年のジョイフル本田の大ファンの私からするなら、ちょっとさみしい気がする。