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流行はアメリカ回りでやってくる

 ニッショーストア(現:阪食〈大阪府/千野和利社長〉)で取締役店舗運営部長だった井上靖之さん(故人)は、よく「流行はアメリカ回りでやってくる」と語っていた。

 

 「1970年代にピザパイをヨーロッパから直接持ち込み、日本に提案したことがあった。しかしほとんど受け入れてもらえなかった」。

 

 ところが、1985年、アメリカ生まれの「ドミノ・ピザ」が日本で宅配サービスを始めるころからピザは日本の食文化に定着し始め、現在、定番食品の地位を築くに至っている。

 

 イタリアのカフェやバールで提供されていたエスプレッソコーヒーも日本ではなかなか受け入れられなかった一品だ。けれども、「スターバックス」などアメリカ西海岸に拠点を置く、シアトル系コーヒーの一派として日本では受け入れられるようになっていった。

 

 井上さんは、「ヨーロッパのモノはアメリカでの流行を経由してから導入した方がうまくいく」ことを多くの事例を紐解きながら教えてくれた。

 

 この名言に象徴されるように、私たちはヨーロッパの事情にはとんとうとい。メルセデスやルイ・ヴィトンは知っているけれども、キリスト教をベースにした文化、生活。スポーツなら、サッカー界、サイクルスポーツ。もちろん食文化にしても、理解していることの方が少ない。

 

 敗戦後、マッカーサー元帥が残していったものは、まだまだ日本に影を落としている。