今日は、『しまむらとヤオコー―小さな町が生んだ2大小売チェーン―』(小川孔輔著:小学館刊、1470円)を紹介したい。
2011年1月31日に発刊された同書は、『チェーンストアエイジ』誌に2008年9月1日号から2009年8月1日・8月15日合併号までの間、22回にわたって連載した「小川町経営風土記」をベースに大幅加筆修正した単行本である。
埼玉県小川町という人口わずか3万6000人の地方都市から、しまむら(埼玉県/野中正人社長)とヤオコー(埼玉県/川野清巳社長)という超優良小売業2社がどうして生まれたのかを追ったルポルタージュ兼小説兼経済リポートといった書物である。
小川孔輔法政大学教授に、なぜこの連載をお願いしたのかと言えば、話は1999年ごろにさかのぼる。
当時、急速に台頭してきたしまむらとヤオコーが同じ小川町の出身であることを知った私は、さんざん酔っぱらった挙句の果てに小川先生に言った。
「先生の名字は小川でしょ、小川先生の綴る小川町物語って面白くないですかねえ?」。
まあ、良い企画とは往々にしてそんなものだが、たわいもない酔っ払いのシャレが発端だった。
ところが、たったその一言が小川先生の胸に響き、奮起させたのだ。
ただ、当時の私は『ダイヤモンド ホームセンター』誌の副編集長。扱う商材の異なる衣料品チェーンや食品スーパーの話を『ダイヤモンド ホームセンター』誌に掲載するだけの力も勇気もなかった。そして、いつしかそんな会話のあった夜のことも忘れてしまっていた。
しかし、小川先生は、忘れていなかった。
2008年に私が『チェーンストアエイジ』誌の編集長に復帰すると、またまた飲み会の折に、「あの話だけどさ…」と「小川町物語」連載のことを切り出してきた。
この10年の間に小川先生とは趣味のマラソンを介して、とくに親交を深めていた。同じランナーチームに所属し、毎年2~3回は、同じマラソン大会に出場。酒を酌み交わすことは数知れず、もう関係は“年長の友人”の領域である。
その人に「あの話だけどさ…」と切り出されてしまったのである。
著作が数多くある先生なので書くこと自体は問題ないと踏んでいた。
しかし遅筆の先生に長期連載、またエンターテインメント性を備えたものを書くことは大丈夫かな、とためらいもあったのは事実だ。
それでも、えいや、とばかりに任せてしまうと、あにはからんや、毎回とても良い原稿を書いてくれた。
齢57歳を超えて、物凄い努力をしたのだと推察できる。お疲れさまでした。
小川先生も、原稿が心配だったのだろう。遅い筆と手離れの悪さには毎号、辟易とさせられたが、1年間の連載を見事に成し遂げ、今回の出版に至った。
おめでとうございます!
ということでBLOG読者の皆様にお願いです。
名著『しまむらとヤオコー―小さな町が生んだ2大小売チェーン―』をぜひお買い求めください。