有力チェーンの源流をたどるシリーズ。これまで大阪府茨木市の「なか卯」、京都府京都市の「餃子の王将」などを紹介してきた。今回訪れるのは、うどん専門店「丸亀製麺」の1号店である。店名から讃岐うどんの本場、四国を想像するかもしれないが、実際に降り立ったのは兵庫県加古川市だ。地元の見どころにも触れつつ、その現場へ向かうことにしよう。

丸亀製麺の原点「棋士のまち加古川」
加古川市は兵庫県南部の、ほぼ中央に位置する都市。南側は播磨湾に面し、西側は姫路市と接しており、江戸時代には参勤交代の宿場町として栄えた歴史を有している。現在の人口は約26万人で、県内では第5位の規模である。
実は、同市は将棋が盛んな土地としても知られる。ゆかりの棋士が7人もおり、幅広い世代の熱心なファンが多い。さまざまなイベントや教室も開催されている。
私が降り立ったのはJR「加古川」駅である。駅前には「棋士のまち加古川」と記されたポスターやのぼりがあちこちで見られ、市が観光資源として将棋を積極的にPRしている様子がうかがえる。
今回訪れるのは、うどん専門チェーン「丸亀製麺」。店名から讃岐うどんや四国を連想する人も多いだろうが、実は1号店は加古川市にあるのだ。
丸亀製麺の創業者である粟田貴也氏は、讃岐うどんの聖地・丸亀市で、
これらの背景を知ると、1号店への興味が一層深まる。駅近くの加古川観光協会を訪れると、市にゆかりのある著名人のサインが飾られており、粟田氏の色紙もあった。そこには「丸亀製麺の創業地 加古川から世界へ」と記されており、ビジネスに懸ける熱い思いが伝わってくる。
観光協会を後にした私は、いよいよ1号店へと向かう。どのような店であるか期待に胸を膨らませると、足取りは自然と速くなった。
国内外で親しまれるうどんの味
歩くこと約15分、整備された加古川市道沿いにある加古川市役所を過ぎたところに「丸亀製麺加古川店」はあった。
見上げると、看板には「丸亀製麺 釜揚げうどん専門店」。赤い文字で強調された「讃岐」の文字が目を引く。入り口の前にある「丸亀製麺 創業店 平成十二年 十一月開店」と刻まれた木製の看板が誇らしい。
店内へ入ると、目に留まったのは「創業当時に使用していた器」のコーナー。2つのお椀が無造作に置かれているだけだが、まるで博物館に来たような気分になった。
案内に沿って進み、対面で作業している店員に「かけうどん並」を注文。受け取ってトレイに乗せ、その流れで野菜かき揚げ、えび、れんこんの天ぷらをチョイス、お勘定を済ませた。
カウンター席に腰を下ろすと、目の前の壁には創業から20周年までの年表が掲示されている。2000年11月の「第一号店 加古川店(兵庫県)オープン」を起点に、06年7月の「大東店」(大阪府大東市)で100店舗目を達成、その後も着実に店舗網を広げた軌跡が一目でわかる。
さて、うどんである。
まずは七味を振りかけ、割り箸を使って麺をすする。うん、安定のおいしさだ。続いてかき揚げを少しつゆに浸してから口に運ぶ。あっさりしたうどんと揚げたての天ぷらの相性は抜群である。次々と食べ進め、あっという間に完食した次第である。
満腹になった私は、改めて年表に目をやった。今や国内はもちろん、ベトナム、フィリピン、カンボジアといったアジア各国、さらにアメリカでも事業展開する丸亀製麺。その第一歩が、ここ加古川店だったと思うと、感慨深いものがある。
満足感に包まれながら、私は店を後にした。