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愛媛県南部の城下町で楽しむ、海の幸あふれる郷土料理「宇和島鯛めし」の魅力

愛媛県宇和島市へやってきた。城下町から発展した都市で、情緒ある街並みが味わい深いほか、気候が温暖なので人々の気風も穏やかなのが心地よい。今回はそんな魅力ある宇和島をじっくり楽しんでやろうと、自転車で各地を回った後、他では郷土料理を食べるという話である。

「南予」独特の鯛めし
「南予」独特の鯛めしが美味

九島大橋を渡り、島の景色を満喫

 宇和島市には仕事で定期的にやってくる。といっても私が住む京都からだとかなり遠く、愛媛県の県庁所在地、松山市まで陸路で4時間半、空路なら3時間半。そこから特急列車に乗り、さらに1時間30分ほどかかる。

 あらためて宇和島市について紹介すると、愛媛県西南部に位置する人口約69000人の都市だ。西は宇和海に面し、日本を代表するリアス式海岸が広がっている。

 私の同級生に両親が愛媛県出身の友達がいて、かつて「宇和島は暖かく、穏やかな人が多いらしいよ」と聞き、好感度が上がった記憶がある。黒潮の影響もあり、温暖な気候が関係しているのかもしれない。

 今回はスケジュールの都合で、宇和島に宿泊する必要があった。こんな機会はあまりなく、それなら現地をじっくり楽しんでやろうと頭を切り替えた。

 さてどのように活動するか。徒歩や公共交通手段もいいが、あちこちを自由に移動したいと考え、宿泊したホテルで自転車を借りた。

 では出発だ。時計を見ると午前11時前である。

 宇和島は、城下町から発展した都市。駅近くの街並みも情緒がある。ここは宇和島城をめざすべきところだが、私には行きたい場所があったのでパスすることにした。

城下町から発展した都市だけに街並みは風情がある

 向かうのは海の方向。車の通行量も比較的多い国道320号線を西へまっすぐ進み、78分ほどで潮風が感じられた。途中、何度も自転車を降り、Googleマップで現在地と行き先を確認、先を急いだ。

 坂や蛇行する道もあり、楽ではなかったが30分弱で目的地が見えてきた。それは九島である。かつて島に行くにはフェリーに乗らなければならなかったが、20164月、九島大橋が開通したことで現在は気軽にアクセスできるようになっている。

当初、島を一周(12km)する計画だった。しかし足を運んだのは残暑が続く9月初中旬で、まだ強い日差しが照りつけていた。また水を買える場所も限られていることもあって危険と判断、あえなく断念した。

全長468mの九島大橋を自転車で駆け抜ける。下を見ると、船が通過していた

 また寄るつもりだった飲食店も休みで、小さな食料品店でパンを買い求め、空腹を満たした。それでも日陰を選びながら海の見える風景を楽しんだ。次こそは一周するぞと心に決め、島を後にしたのだった。

海を見ているだけで心が癒された

 

郷土料理を味わい尽くす 「ふかの湯ざらし」や「丸ずし」も

 夕方になり、次は宇和島でしか体験できない食事をしようと思った。それなら郷土料理だろうとスマホで検索、複数候補がある中で選んだのが宇和島駅近くの「ほづみ亭」だった。店構えも歴史が感じられる。私は期待を胸に、暖簾をくぐった。

郷土料理を出す「ほづみ亭」へ

 通されたのは広めのテーブル席。早速、メニューを見て、何を食べるかを検討し「宇和島鯛めし御膳」に決めた。

 料理が来る間、店内を観察していると、ちょうどお客が次々と入ってくるところだった。観光客もいるが、割と地元のお客も多く、女性スタッフと親しげに話をする姿がそこかしこで見られた。地域に愛されている店は間違いない。

 10分ほどして私の前に届けられたのがこれ。どうです、いいでしょう。まず生ビールで喉を潤し、そして料理にとりかかる。

「宇和島鯛めし御膳」が届いた

 最初に箸を伸ばしたのは「ふかの湯ざらし」。地元で水揚げされたふか、つまりサメを熱湯に通した後、流水にさらしたもので、カラシ味噌をつけて食べる。サメと知り、ちょっと恐々だったが、口にするとあっさりして美味だった。調理には時間がかかり、提供する店は限られているらしい。

サメを調理した「ふかの湯ざらし」から。カラシ味噌をつけて食べる

 次は「丸ずし」。しゃりの代わりにおからが使われいる。上に乗っているネタは季節により異なるが、私が食べた時はカマスとのことだった。

“しゃり”の代わりに“おから”が使われいる「丸ずし」

 ほかにも、じゃこ天のすり身を揚げずに焼き上げた「はらんぼのすり身焼」などがあり、いずれも興味津々で食べた。

 そしていよいよメーンの「宇和島鯛めし」である。メニューに「宇和島」がついているのは、「中予」の松山、「東予」の今治で出される鯛めしとは異なるからだ。つまり松山、今治では、鯛を丸ごと一匹、土鍋や釜に入れて炊き込んで作る。これに対し、「南予」の宇和島では、鯛の刺身をタレにつけ込み、薬味といっしょに混ぜたものをご飯の上にかけて食べる。いわば漁師めしのようなものである。

鯛の刺身を乗せていただく「宇和島鯛めし」。おいしい!

 お椀に適量のごはんを守り、そして鯛の刺身を乗せ、だしをかけた。見ているだけで食欲が湧きまくる。あまりにもおいしそうなので、ゆっくり味わおうと心がけたものの、一口食べると気持ちが制御不可能になった。箸が高速回転し始め、一気に食べてしまう。ふぅ、最高。ごちそうさまでした。

 お会計の際、従業員のお姉さんから店の歴史を聞いた。それによれば約70年前、旅館として創業し、約40年前から飲食店へ業態転換したとのことだった。なるほど、風情のある店構えも納得できた。私は大満足で店を出たのだった。

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