こんにちは、成田直人です。僕が実際にあるすごい店を体験して、その秘密を解説する後編。今回の要旨は、「お客に感動を与えるこだわり」と「自慢」は隣り合わせであるということ、そして、主導権を常にお客にゆだねるからこそ、「自慢」にはならずに、あなたのお店の細やかなこだわりが「感動」を与えることになる、という話です。どういうことか、実例をもとに見ていきましょう。

これからの接客は
主導権をお客に委ねることが大事!
前回、「トークの運び方に一流たるゆえんがある」ことをお話しました。知識や経験を自慢げに話すのではなく、顧客同士の会話の中で「問い」が生まれる瞬間まで待ち、そこで効果的にこだわりを話すことで、一気にお客さまをひきつけたのです。
ところが、販売力の低いスタッフは、すぐに商品説明をしたり、試着をさせようとします。主導権を常に販売側が持ちたいと思っているのです。
この手法は「需要>供給」の時代に成り立った手法です。なぜなら欲しい人がたくさんいて、みなが「買いたい」と思っているから、すぐに説明をするのは理にかなっていたのです。
ところが、今は「需要<供給」の厳しい時代。売り手にはたくさんのライバルがいて、お客さまも別に「もの」を欲しいとは思っていません。そんな時代に、すぐに商品説明をしても、嫌がられるだけ。つまり、現代にはそぐわない手法なのです。
では、どのように考えればよいかというと、「主導権をお客さまに委ねる」ことです。お客さまが「あること」や「興味」を話題にしてから、素振りに見せてから会話に入り込み、その流れの中で「想定外を生み出すこだわり」に触れることで、そのこだわりがお客さまの心にスムースに浸透していくのです。
ここで、自慢(売り込み)と感動(想定外)は常に隣り合わせである、ということを覚えておいてくださいね。言葉の順序が変わるだけで印象が大きく変わるので、常に顧客主体で接客を進めることが大切なのです。
このように学びが深いランチになったのですが、大将個人についてもとてつもなく驚いたことがあったのでご紹介します。それは「修行をしたことがない」ということです。元々サラリーマンをしていて寿司が大好きで寿司店を始めたとのことでした。新しいチャレンジをするには背景(経験)がなくても飛び込めるんだと心底感動しました。だからこそ既存のセオリーを飛び越えた感動を提供する寿司を握ることができるのだと感銘を受けました。
ファンを作るためには下積み経験も大切ですが、それ以上に寿司が大好きで研究を重ねるというプロセスがいかに大事なことか。そのことを僕自身、そして読者の皆さまにとっても、仕事面で置き換えられることがあるのではないでしょうか。
それこそせっかくの長い業界経験が、仇になる場合があります。業界の慣習に染まって新しいチャレンジをするにしても「それは無理」「それは難しい」とすぐに否定したり諦めたりしていませんか?
そうではなく、「どうしたらできるのか?」という建設的な思考を持つことが重要です。
1日1食、水分摂取量まで徹底、店主の驚異の自己管理術
既存のやり方に縛られないことが結果的に2ヶ月先まで予約が取れないほどのファンで溢れる繁盛店になったわけですが、大将が、寿司への情熱と同じくらい力を入れていたのが「自己管理」です。なんと30代前半から主治医についてもらい、1日1食で、あえて運動をせずに水分摂取量まで徹底している姿にはストイックすぎて言葉を失いました。
理由は「大好きな寿司店を80歳まで続けたい!」という強い思いからだそうです。「僕のキャリアは80歳がピークで、そこからは寿司の学校をやりたい」とおっしゃっていました。「1日16時間寿司のことだけを考えているからこそ健康な肉体と安定した精神が技を磨く」との金言までいただきました(個人的な解釈がかなり含まれていると思います)。
この話には痺れました。すべては自分の仕事のパフォーマンスを最大化させるためにどんな毎日を過ごすべきなのか?を勉強し徹底する姿勢です。ここから学べることはたくさんあります。
とはいえ、「あなたもこの瞬間から大将のようにストイックな日々を過ごして仕事のことだけを考えろ!」と言うつもりは全くありません。僕も至らないところだらけなので押し付ける権利もありません。
しかし、今回の話の意図は読み取ってください。紹介したのは富山県で一番の有名店であり、県外から顧客が押し寄せるほどファンで溢れる店です。「いったいどんな店なのか?」を僕なりに解説させていただきました。「仕事人はプロであれ!」をまさに体現している姿に感動して、料理はさることながらまた大将に会いたい!と思ってしまい、富山に行く予定などないのに、次に予約のできるタイミングでまた予約を取ってしまったのです。
あなたの店に出会い、あなたとの対話を通してまた次回の来店を約束するお客さまがいたとしたら、最高に嬉しいことではありませんか。しかもそんなお客さまが増えていったとしたら…… そんなお店にしたい、そんな人になりたいと思うのだとしたら、今回の大将のエピソードから、「ファンづくりの極意」をきっと学べると思います。
僕自身も日々精進してもっと読者の皆様に貢献できるよう心技体を磨き続けていきたいと思います!押忍!!
一流店が提供する、自慢にならずに「感動」を与える顧客体験とそのための「顧客主導型接客」ですが、これを皆さまの店舗でも、“ねらって”実践する方法があります。それもマインドセットのやり方から、教育、実際のやり方までの体系化された具体的な手法です。僕の新刊「勝手に売れ続ける最高のセールス」を読むと、オンラインにはない価値を磨き上げた、強い店舗をつくることができますので、ぜひご覧ください。