[東京 18日 ロイター] – 元日銀理事で富士通総研エグゼクティブ・フェローの早川英男氏は18日、ロイターのインタビューで、日本経済は軽い景気後退局面にあるとの厳しい見方を示した。来年前半には持ち直してくるとみているが、力強い成長は期待できない「実感のない回復」になると予想した。
早川氏は景気後退局面と判断している理由について「景気動向指数をみれば明らかに昨年の秋がピークだ」と指摘。「基調判断は3、4、8、9、10月と1年間のうち5カ月が悪化。10、12月もほぼ確実に悪化するので、どう考えてもこれはリセッションだ」と語った。
ただ、景気動向指数は製造業の影響を受けやすいため、「ちょっと弱く出すぎているのも事実だ」と述べ、別の指標でも確認する必要があると指摘。「景気の全体像をみるには経済産業省の全産業活動指数が一番もっともらしい」としたが、これも1─3月は前期比マイナス0.5%、4─6月期が同プラス0.5%、7─9月期は同プラス0.3%、「10─12月期はまた落ちる」と横ばい圏で推移していることから、この数字からも「軽度のリセッションと言うのが一番いい」と繰り返した。
先行きについては「外需は戻ってはいないが、どんどん落ちていく感じではない。世界全体の動きをみても、景気減速には歯止めがかかりつつある」として、「来年前半のどこかで持ち直しが始まる」との見通しを示した。事業規模26兆円の経済対策も景気を下支えするとみており、この結果、景気後退は昨年秋から来年前半までの1年半くらいになるとの見方を示した。この見方通りなら、アベノミクス景気は戦後最長にはならない。
早川氏は、日本経済の特徴は実感のない景気回復と実感のない景気後退であり、潜在成長率付近の成長を続けていることがその背景にあると説明。「日本の潜在成長率を内閣府と日銀の試算の間の0.8─0.9%だとすると、日本の成長は実力値の0.8─0.9%を中心に0.2─0.3%上下に動いているだけで、良い時も悪い時も実感がないのは当たり前だ」と語った。
その上で「問題なのは、日本の実力が低いことだ」と強調した。
足元では世界中で金融政策の限界が指摘される中、財政政策への期待が高まっているが、日本の場合は「潜在成長率を高めるような財政政策ができるかどうかが重要だ」と指摘した。
一方、日銀の金融政策については「物価目標の2%がはるか彼方にある中で、本格的な正常化ができるかというと、それはない」として、「今できることは(国債買い入れなどを明示せずに減額する)ステルス正常化だ」と述べた。
緩和方向に関しては「悪くなってもほとんど打てる手はない」と述べ、唯一実行可能な政策としてマイナス金利の深掘りを挙げた。ただ「理論的には効果があると思っているが、マイナス金利導入が突然だったのでマーケットがパニックを起こし、理屈通り動くかどうかまったくわからなくなってしまった」と指摘、日銀のコミュニケーションの失敗から効果が見通しづらくなっているとの認識を示した。