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『外食逆襲論』中村仁=著 幻冬舎刊 1300円(本体価格)

外食逆襲論

本書の著者は、数々の繁盛店を立ち上げた経歴を持ち、現在は飲食店向けオンライン予約台帳サービスを手掛けるトレタ(東京都)の代表を務める中村仁氏だ。1997年頃をピークに市場規模は縮小トレンドに入り、強い逆風にさらされている外食業界。本書はそんな外食産業が“逆襲”に転じるための指南書である。

小売業の関係者にぜひチェックしてもらいたいのが本書第4章だ。この章で著者は「繁盛店づくりは、常連客づくり」とし、「常連づくりルール」として4つのポイントを挙げている。

順に見ていくと、1つめは「8割の売り上げは、上位2割の顧客からもたらされる」。「パレートの法則」とも言われ、売上の大半は少数のリピーターによるものであり、新規客獲得よりも常連づくりにマーケティングコストを割いたほうが効率よく売上アップを図れるというもの。

2つめは「2回目、3回目のお客様が勝負を決める」。トレタの調査によれば、飲食店への再来店率は来店3~4回めまで急激に上昇し、その後は緩やかに伸びていくという。つまり、2~3回めの来店が常連化の分岐点になるというのだ。3つめの「来店数が増えるとともに、来店間隔が短くなる」では、2~3回めの来店のお客を満足させるサービスを提供することの重要性を説いている。

注目したいのが4つめの「『人間にしか提供できない価値』を最大化する」。本書の中で著者は「スナックこそ、最強の飲食店」と述べている。スナックの多くは「商品」「空間」といった要素を削ぎ落とし、「ママ」という人の価値を最大化することで、顧客を引きつけている。常連づくりという観点でみると、スナックから学べることは多いというのだ。

本書は外食産業向けではあるものの、このような常連づくりのルールなどは小売業経営にも通じるところがあるのではないだろうか。“逆襲”を受けないためにも、今のうちから外食産業の手の内を研究しておきたいところだ。

『ダイヤモンド・チェーンストア』2019年12月15日・2020年1月1日合併号掲載)