西日本小売の雄のイズミは、総合スーパー(GMS)の“優等生”企業だ。2019年2月期連結業績は、営業収益が7321億円、営業利益が352億円。規模こそ全国に店舗展開するGMS企業に劣るものの、売上高営業利益率は4.8%とGMS業界屈指の収益力を誇る。
本書は、戦後の闇市で始まった露店が年商7000億円超のリージョナルチェーンに成長するまでの軌跡を綴った、イズミ創業者である山西義政名誉会長の自叙伝だ。
現在96歳の山西氏。商売人生の原点は、小学生時代に家計を助けるために始めたアサリ・シジミの行商、そして、復員後に広島駅前で開いた露店にあるという。戸板の上に干し柿を並べただけの小さな露店は、やがて衣料品卸問屋の「山西商店」となる。そして1961年になると、スーパーマーケット「いづみ」をオープンさせ、小売業に進出。78年には地方でチェーン展開するスーパー企業として初の上場を果たしている。
特筆すべきは、山西氏の「時代感覚」だ。干し柿の露天から衣料品卸問屋への転身にはじまり、63年に満を持して大阪に進出した際も、「(本部から)目が行き届かない」という理由から半年ほどで撤退している。
また、1970年代にミスタードーナツが日本進出した際には、いち早くフランチャイズに加盟。そのほかにも、「小僧寿しチェーン」「ココス」など外食業態を続々とフランチャイズ展開したかと思えば、「やがて飽きられるのではないか」という判断から、好調な状況であったにもかかわらず事業を手放している。
構造不況が囁かれるGMS業態の今後について、山西氏は「GMSはまだまだ収益を上げつづけることができる」と断言する。現在も週6日出勤し、週末には店舗を巡回するという山西氏。先見の明によってイズミ発展を導いてきた山西氏が、次なる成長のカギと見るのはなにか。「驚愕の時代感覚」(本書装丁より)を持つ経営者の理念が本書には詰め込まれている。
(『ダイヤモンド・チェーンストア』2019年8月1日・15日合併号掲載)