「素直さとプラス発想をもってしっかり努力していきたい」。
2018年6月1日にコスモス薬品(福岡県)のトップに就任した横山英昭社長は、決算発表の席上、真っ先に意気込みを述べた。
同社の2018年5月期の売上高は5579億9900万円(対前期比11.0%増)、営業利益227億4900万円(同2.3%増)、経常利益252億5500万円(同2.7%増)、当期純利益176億3300万円(同3.2%減)の27期連続増収、11期連続で過去最高となる営業利益・経常利益をたたき出した。当期純利益減益の主因は、前期にあった熊本県地震の保険金戻り約10億円の反動減だった。
なお、既存店成長率は対前期比2.7%増(客数同0.1%増、客単価同2.6%増、買い上げ点数同1.5%増、1品単価同1.0%増)。
一般食品の売上高は、3134億7000万円と同12.1%増を記録。売上構成比は同0.6ポイント増の56.2%になった。
「相場高の追い風を受け、カット野菜がものすごく売れた。社会背景のもと、パーソナル商品(個食)もよく動いた」(同社)。
「第3四半期までの減益トレンドを第4四半期の3カ月間だけで挽回した。安くて近くて便利なドラッグストアの支持や潜在性は大きいと改めて実感した」(同社)。
この間、同社はかねてからの公約通り既存店舗数の約1割に当たる店舗を出店した。具体的には、九州に33店舗、四国9店舗、中国19店舗、関西23店舗、中部11店舗の95店舗を出店。同時に10店舗をスクラップし、期末店舗数は912店舗になった。
「EDLCとEDLPに磨きをかけながら、自社競合をいとわずにドミナントエリアを深耕。シェア拡大を図るとともに、中部と関西エリアへと商勢圏を拡大している」(横山社長)。
これまで「小商圏型メガドラッグストア」の出店に注力してきた同社ではあるが、2018年1月に発表した方針に基づき、福岡県福岡市天神に都市型1号店を出店した。
「郊外大型店舗が出店戦略の主軸であることに変わりはない。しかしながら、ドラッグ市場全体の規模拡大にインバウンド需要が寄与したとも考えている。収益性の高いインバウンド店舗の盛り上がりを看過することはできないと考えた。今後は、複合的に都市型店舗を出店したい」(同社)。
1号店となった天神店は、好立地とは言えない場所にあるが、とても好調に推移しているという。
同社は、福岡市内や大阪心斎橋、東京銀座の一等地を視野に入れて、最低50坪ほどの売場面積を有し、食品は扱わない都市型店舗を出店していく。
「品揃えは、小商圏型メガドラッグストアとの比較で言えば完璧でなくともいい。たとえば、天神店にはおむつは置いていない。売れる商品に絞り込めばいい」(同社)。
コスモス薬品は、副業的に都市型店舗を出しながら、2019年5月期も九州に20店舗、中四国に20店舗、それ以外に60店舗の出店を計画している。
これまで同社は、2020年の東京五輪以降に関東圏に進出することを明言していたが、都市型店舗はそれとは別の話だという。「関東圏への郊外型店舗出店の方針は変わらない。千葉県、茨城県、埼玉県辺りからスタートさせたい」(同社)。
記者会見の中で、質問が「アマゾンの脅威」について及ぶと、「アマゾンは既存の商売を壊す革新的な企業」と評価しながらも「徒歩・自転車・クルマというどの手段でも10分で来店でき、10分で買物をし、10分で帰宅できる。小商圏30分ストアは強いと思う。加えて、Eコマースにはできないフレンドリィな接客でリアル店舗を磨きこみたい」と自信をみせた。