東京外国為替市場で円相場が一時1ドル=155円台後半に下落した25日、企業経営者からは国内経済への悪影響を警戒する声が相次いだ。原材料を輸入に頼る企業は負担増を懸念。物価高による消費マインド減退につながる恐れもあることから、円安の恩恵を受ける輸出企業などからも「日本経済にダメージを与える部分が出てくる」(工藤幸四郎旭化成社長)と不安視する声が聞かれた。
東京ガスの南琢常務執行役員は25日の決算記者会見で、「ガスの原料や電力の燃料は円安が進めば高くなる」と調達コストの増大を懸念。「ここまで円安が進む状況は想定していない」と厳しい表情で語った。海外産の原材料を使う食品メーカーも「円安が長期化すれば(事前に設定したレートで取引する)為替予約で補えない」と顔を曇らせる。
インバウンド(訪日客)需要に沸く百貨店も、輸入品の再値上げなどによって「国内客が買いにくくなる局面に入る場合も考えられる」(安田洋子日本百貨店協会専務理事)と警戒。旅行業界は円安による訪日客の一段の増加で「オーバーツーリズム(観光公害)がさらに問題になる」と負の側面にも気をもんでいる。
円安で海外事業の収益が押し上げられる企業も「日本の社員の相対的な給与の価値も影響を受ける。必ずしもいいことばかりではない」(小木曽聡日野自動車社長)と「安いニッポン」化の弊害を指摘。時田隆仁富士通社長は「大きな変動は企業経営の立場から好ましくない」と述べた上で、「政府や日銀、各国のコミュニケーションで抑制されると期待している」と適切な対応を求めた。