百貨店がモノを売るだけでなく、医療や美容に関するサービスを充実させている。病気を予防し、体を外側からも内側からも健やかに保ちたい消費者が増えているためだ。オンラインではできない対面式のサービスで、集客力を高める狙いもある。
三越日本橋本店(東京都中央区)の新館に4月、認知症予防と歯科診療を組み合わせた「歯科・健脳クリニック日本橋」がオープンした。アルツハイマー病を早期に発見するためのコースが人気で、価格は165万円からと高額だが、「ご夫婦で申し込まれたり、口コミで他の方を呼ばれたりする。お客さまは健康と美に関心が高い」(丸井良太店長)という。
クリニックを運営する神奈川歯科大の鹿島勇理事長は「三越には集客力がある。中国など海外店舗にも出店したい」と意気込む。
西武池袋本店(同豊島区)では2月、肌ケアなど美容医療を提供する「CZEN CLINIC(シゼンクリニック)」が開店。百貨店の外商顧客も訪れるなど客足は好調で、そごう・西武の広報担当者は「需要があり、今後も美容医療のテナントを拡大する」と話す。
医療や美容の事業者にとっても、百貨店のブランド力や立地の良さは魅力だ。日本橋高島屋ショッピングセンター(同中央区)の新館には、不妊治療クリニックや整体サロン、高級理容室がそろう。40代以上の女性や男性会社員を中心に、毎週、毎月と定期的に通う人が多いという。
大丸心斎橋店(大阪市)は、隣接するグループの心斎橋パルコとの相乗効果に期待する。パルコには女性の健康や美容に特化した売り場があるが、メインターゲットの若い女性だけでなく、連絡通路を通って大丸から祖母、母、娘の3世代で訪れる顧客も少なくない。大丸の担当者は「両館の体験価値をさらに強化できる」とみている。