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原材料高、企業になお重し=製造業に逆風、非製造は改善―価格転嫁追い付かず・12月短観〔潮流底流〕

日本銀行本店
〔写真説明〕日本銀行本店

 日銀が14日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が4四半期連続で悪化した。ロシアのウクライナ侵攻を背景に原材料価格の高騰が続き、販売価格への転嫁でもコスト高を賄い切れない。景況感が改善した非製造業も先行きには慎重で、新型コロナウイルス禍からの本格回復の「重し」となっている。

 ◇円安でも補えず

 「原材料の高騰分を為替で補えなかった」。スズキの鈴木俊宏社長はこう振り返る。

 半導体などの供給制約がようやく和らいだ自動車業界。歴史的な円安水準を付けた2022年、本来ならば輸出企業にとって追い風になるはずだったが、仕入れ価格の高騰が年間を通して逆風となった格好だ。

 短観では、大企業製造業の仕入れ価格判断DIは1980年5月以来の高水準となった。「(原材料価格の)高騰は従来にないスピード。取り巻く環境は厳しい」(トヨタ自動車の熊倉和生調達本部長)と、苦境を訴える声はやまない。

 価格転嫁の動きも広がっており、販売価格判断DIは、製造業、非製造業ともに調査開始以来最大の水準だ。しかし、「全てをカバーできているわけではない」(三菱電機)。10月に国内商品を値上げしたTOTOも、直近の原材料価格を反映し切れておらず、「自助努力が前提だが、価格転嫁を含め対応策を検討する」としている。

 ◇インバウンド回復

 一方、大企業非製造業は宿泊・飲食サービスや小売業を中心に、3期連続で景況感が改善した。新型コロナ対策の行動制限緩和や、政府の旅行需要喚起策「全国旅行支援」などの効果に加え、インバウンド(訪日外国人旅行者)需要も回復傾向。大丸松坂屋百貨店は「台湾や韓国などのほか、米国からの買い物客の売り上げが伸びている」とうれしい悲鳴を上げる。

 しかし、原材料高が影を落とす。ある大手外食幹部は「2度値上げしたが、原材料やエネルギー価格上昇に追い付かず、利幅は縮小する一方。さらなる値上げもあり得る」と明かす。中堅スーパー幹部も「スーパーは冷蔵庫と冷凍庫の塊。電気代の負担が大きく、非常に厳しい」と嘆く。

 ◇海外経済にも懸念

 先行きについても慎重な見方が多い。製造業では、中国や欧米など海外経済の減速が懸念材料だ。「国内のサプライヤーを優先することは当然ある」(NECの森田隆之社長)と、リスク回避に向けて生産や調達の「国内回帰」の動きも広がる。非製造業は原材料高に加え、コロナ感染「第8波」による個人消費への影響を不安視する声が根強い。国内企業を取り巻く経営環境は、なお厳しい状況が続きそうだ。