食品の価格上昇が、いよいよ鮮明になってきた。総務省が20日発表した4月の全国消費者物価指数は、約7年ぶりの伸び率となる前年同月比2.1%の上昇。指数を押し上げた要因の一つが食品だ。原材料高を受けたメーカーの値上げは止まらず、ウクライナ情勢や円安を背景に今後もこうした動きが続く可能性がある。家計への打撃が深刻化しかねない。
「これだけ広範囲に値上げを実感するのは、消費者にとってもかつてないのではないか」。12日に開かれた明治ホールディングスの決算記者会見。川村和夫社長は相次ぐ値上げについて問われ、取り巻く環境の厳しさを語った。
実際に、今後も幅広い食品の値上げが予定されている。明治はこれまでに値上げしたチーズやチョコレートなどに加え、6月にはアイスクリームの希望小売価格(税抜き)を6.7~8.6%引き上げる予定。7月1日には山崎製パンが食パンと菓子パンを、ハウス食品も8月15日にカレールーなどの価格を上げる。
10月1日には、サントリー食品インターナショナルが清涼飲料水を6~20%値上げ。アサヒビールもビールや缶酎ハイの価格引き上げを決めている。
背景の一つは、世界的な原材料価格の上昇だ。特に、ロシアによるウクライナ侵攻で両国が主要輸出国となっている小麦は供給懸念が高まり、国際価格が高騰。政府が輸入して民間企業に売り渡す小麦価格は4月に17.3%引き上げられた。
ただ、政府の売り渡し価格にウクライナ侵攻による小麦相場の上昇が本格的に反映されるのは、10月の価格改定となる見通し。そこから実際に食品価格へ転嫁されるのは数カ月先になるとみられる。
円安もこうした輸入価格を押し上げる要因だ。ウクライナ情勢、為替相場ともに先行きは見通せず、家計への負担に直結する食品の値上がりは今後も止まらない恐れがある。味の素の藤江太郎社長は「企業努力が第一ではあるが、必要な部分は値上げを継続してお願いすることもある」と述べた。