【ニューヨーク時事】新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、これまで労働組合が無かったIT大手などの従業員が新たに労組を結成する動きが米国で広がっている。労働環境の悪化を契機に従業員らが団結し、待遇改善を求める声を強めている。
インターネット通販最大手アマゾン・ドット・コムでは4月、ニューヨーク市の物流倉庫で、同社初となる労組の結成が従業員投票で決まった。IT大手アップルでも、小売店「アップルストア」の米国内の複数店舗で、労組結成に向けた動きが表面化している。
コーヒーチェーン最大手スターバックスでは昨年12月、ニューヨーク州西部の都市バファローの直営店で、1992年の上場後では初という労組が結成された。その後も動きは全米に拡大し、米メディアによると、労組結成が決まった店舗は今年4月下旬時点で20カ所以上に増えた。
こうした労働運動拡大の背景にあるのは、コロナ禍で人手不足が深刻化したことによる現場の負担増だ。職場での感染リスクへの懸念も大きい。アマゾンで運動を率いるクリス・スモールズ氏は「感染から従業員を守りたい」と訴え、労組を通じて待遇改善を目指す考えだ。
一方、企業側は、人件費の増加などを警戒し、対決姿勢を強めている。スタバのシュルツ最高経営責任者(CEO)は「(労組による)対立や分断が会社や従業員の利益になるとは思わない」と警告。同社は労組加入者には福利厚生の一部を適用しない方向で検討中と報じられている。アマゾンは、労組結成が決まった従業員投票で「不正な介入があった」と訴え、再投票の実施を求めた。
米国では民間労組の組織率が昨年は6.1%まで低下し、長期的な落ち込みが顕著。コロナ禍で火が付いた労組結成の取り組みが、潮目を変える可能性もある。