
昨今、同社が商品開発において重視するのが、消費者の「食品を無駄にしたくない」という心理だ。簡便商品「デリOisix」やミニ野菜「スペパベジ」など、変化する顧客ニーズに寄り添った商品開発を進めている。
「デリOisix」利用者数は最速ペースの伸びを見せる
「Oisix」「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」など複数のブランドで会員制食品ECを展開するオイシックス。これらのブランドはいずれも、食材の安全・安心に強くこだわり、有機栽培の野菜、添加物を極力抑えた加工食品などを提供しているのが特徴だ。
オイシックスの2025年3月期決算によると、BtoC向け定期宅配サービス全体の売上高は対前期比2%減の971億円となった。全体では減収となったものの、主力の「Oisix」事業では、サービス・プロダクトの質向上および送料改定によってARPU(1ユーザー当たり平均売上高)が増加。配送コストの削減と自社製造比率の増加による原価改善により、営業利益率は過去最高の11.5%(同2ポイント増)となった。
「Oisix」の成長を支えているのが、食材とレシピがセットになったミールキット「KitOisix」、そして25年に入ってから本格展開している「デリOisix」などの即食・簡便商品だ。「KitOisix」は、必要な食材とレシピがセットで届くミールキットで、1セットで主菜と副菜の2品が調理できるというもの。週替わりでメニューが自宅に届くため、ユーザーが忙しい日々の中でも手軽にバランスの取れた食事ができるように設計されている。
また、24年4月から販売を開始した商品「デリOisix」は、レンジで温めるだけで食べられる、調理済みの冷蔵総菜だ。「KitOisix」と比べると、調理の手間がかからない点が特徴だ。
その反響は大きく、「デリOisix」のメニューが毎週3セット届く「デリOisixコース」を25年1月より提供開始すると想定以上の申し込みがあり、一時期は新規受付を停止するほどだったという。現在は受付を再開し、25年3月末でのコース登録者数は1万人を突破。過去最速ペースの伸びを見せている。
「これらの商品が伸びているのは、単に時短ニーズに応えたというだけではない。『食材を無駄にしたくない』『余らせたくない』といった、物価高や青果相場の高騰に起因する消費者心理の変化にもマッチしているからだ」とオイシックスで執行役員Oisix商品本部長を務める冨士聡子氏は話す。
ミニ野菜「スペパベジ」野菜購入の再挑戦を促す
オイシックスは前述の消費者心理に対応し、提案型の商品政策(MD)を志向する。利用者のライフスタイルや心理に深く入り込み、より納得感のある購買体験の提供を重視している。
その提案型のMDを象徴するのが、「スペパベジ(スペース・パフォーマンス・ベジタブル)」というカテゴリーである。冷蔵庫内で場所を取らず、単身・少人数世帯でも使い切れるサイズ感を意識した“ミニ野菜群”を指す社内用語だ。
「Oisix」の取り扱い商品だと、
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