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中小企業でもECの翌日配送を実現できる『物流拠点の分散化』とは

前回の記事では、物流の2024年問題がもたらす影響と、その影響が物流とサービスの2極化を促進するというお話をご紹介しました。今回の記事では、消費者が根底にもつスピード配送のニーズに今後も応え続けるためには、どのような手法があるのか具体的な事例を交えてお伝えします。

中小企業にとってハードルの高い翌日配送

 大手EC事業者が消費者のニーズに応える形で、今では当たり前のようになった翌日配送。

 物流の2024年問題で物理的な輸送リソースが減少する以上、小売全体の方向性としてスピード配送は減少傾向にあると考えられます。

 ただし、前回の記事でもご紹介したとおり、販売機会の損失を防ぐためにサービスとしての翌日配送を実現して差別化を図る企業も存在し続けるでしょう。

 そんなスピード配送を実現するためにはさまざまな障壁があり、大手のように大規模な設備投資が行えない中小にとっては、個別にスピード配送を実現するのは厳しいようにも見えます。

 では、大規模な投資ができない中小企業は、ユーザーの根本的なニーズであるスピード配送の実現を諦めるしかないのでしょうか。

翌日配送を実現するためカギは『翌着率』にある

 結論から言えば、限られたリソースの中でユーザーのニーズに応えるためには、翌日に商品が到着する『翌着率』のエリアを見越し、物流センターを日本国内に細かく配置するという方法が有効です。

 しかし、物流業界ではいまだ拠点の分散化に二の足を踏んでしまう会社が少なくありません。

 実は15年以上前の物流業界では、物流拠点を細かく分散させることは不利益に結びつくと考えられていました。在庫管理の精度は今より低く、拠点を細かく切り分けることは物流コストの上昇に直結してしまいます。また、分散した物流拠点にある在庫から注文された商品を即座に引き当てることも難しく、それが販売機会損失につながっていたのです。

 しかし、いまはそうではありません。

 現在は、物流会社側が提供する在庫管理システムやそのほかのさまざまなシステムやの精度がかなり向上しています。倉庫内のオペレーションレベルも高まり、AI技術を活用して人手を介さずに自動で出荷できる状況も整ってきたため、拠点を分けるデメリットをほぼ解消することができるのです。

物流倉庫の働き方にも課題解決の糸口がある

 当社の事例として、EC業界における倉庫の働き方についてご紹介しましょう。

 物流倉庫といえば、かつては一般的に8時や9時に出社し、5時や6時に倉庫が閉まるというのがスタンダードでした。しかし、弊社の物流センターは2部制を採用しており、朝出勤と午後出勤のスタッフで構成され、夜の10時まで標準で稼働しています。

 他にも、自動梱包機は10年前には1台で億超えという時代もありましたが、今では12千万円程度で導入できるようになっており、出荷ラインという部分的な自動化は比較的実現しやすくなっているのです。

 どうしても「自動化」と聞くと大規模な投資を想像するかもしれませんが、出荷ラインの一部やRPARobotic Process Automation:主に人を介して行われていたPCの事務作業などを自動化する技術)など、倉庫作業の一部分を自動化することが主流です。

 こういったアプローチにより、出荷ラインの自動化やピッキングにかかる時間の大幅な削減が可能となり、倉庫の中をより効率的に運営することができるのです。

 このように、工場の2部制は大手企業だから組めるという戦略ではありません。最新技術を活用して業務効率化を図ることで、限られた人員でも人とシステムのバランスをうまく保ち、翌日配送を実現する企業が増えているのです。

 2024年問題で、これまで棚上げしていた物流の課題が表層化する中、消費者のニーズに答えて出荷スピードを向上させるためには、最新技術の活用方法を理解して、変化に対応していくことができるかどうかが重要なターニングポイントとなるでしょう。