前回の記事で、ライブコマースにはメーカー・小売業・個人の3つの区分でそれぞれ使い方や特徴が異なることをご紹介しました。今回の記事では、それぞれのプレイヤーに共通して現在のライブコマースに不可欠な『不完全さ』についてご紹介します。
Eコマースとライブコマースの違い
不完全と聞くと不思議に感じられるかもしれませんが『完璧すぎるコンテンツより不完全が良い』という状況が、現在のライブコマース市場の傾向として表れています。その理由をご説明するためにも、まずはライブコマースとEコマースの違いについておさらいしておきましょう。
そもそもライブコマースは、エンタメと物販が組み合わさったコンテンツで、従来のEコマースとは少し特性が異なります。従来、お買い物をするためには店舗に行く時間が発生するのが当たり前でしたが、Eコマースが登場してボタン1つで買い物が完了し、指定した場所に商品が届くようになりました。欲しい商品を探す際にも検索することですぐに見つかり、レビューを見ることでその商品の人気までわかるという新しい買い物の便利さと手軽さで急速に普及しました。
一方でライブコマースは、配信を見るための時間を使うためEコマースに比べて一見不便な買い物のように見えます。しかし、そもそも買い物には『早い買い物』と『遅い買い物』があります。この違いをしっかりと把握していないと、ライブコマースに不向きな商品やコンテンツ作りをしてしまい、視聴者が離れてしまう結果になりかねないのです。
例えば、普段使いしている日用品など欲しいものが決まっている目的性の高い商品であれば、Eコマースを活用することで、素早く商品が届くという『早さの価値』が強く働きます。品揃えも多く、アパレルやコスメなど商品自体にエンタメ性がある買い物に特に向いていると言えるでしょう。
逆に、ライブコマースでは商品作りにこだわりが強いものや、しっかり情報を伝えないとわかりづらい商品など、本来じっくり説明するべき商品に向いています。
特に食品との相性も良く、普段食べていない特別な食材や、あまり食べる機会がないけど興味がある食品、料理の仕方が特殊なものなどもライブコマースに向いています。
このような、『しっかりと説明が必要な商品』とライブコマースの相性が非常に良いというポイントが重要です。
さらに、前回の記事でもご紹介したように、Eコマースにおいてもテキストが動画化される傾向にあります。ユーザーも、これまでテキストで読み込む必要があった情報を、動画で収集するようになっており、『説明が必要な商品との相性』と『動画需要の高まり』から、これまでEコマースで課題となっていた商材に光を当てるコンテンツこそがライブコマースと言えるのです。
ライブコマースには不完全さが必要
そんなライブコマースは、商品とエンタメを組み合わせたコンテンツであり、エンタメは基本的に人間を軸にしてきました。例えば従来のブログを見ても、ブログ記事の品質よりも、その記事を誰が書いているかによって納得感や楽しさがあるなど、やはりコンテンツには人の存在が重要です。同様に、ライブコマースは基本的には人が配信するため、人への興味やフォロー、いいねがついて回ります。この人間の要素が非常に重要であり、逆に言うと必ずしも資本力のあるプレイヤーが勝つわけではない分野と言えるでしょう。
さらにライブコマースでは、話すことが上手いだけの人ではあまり売上に繋がらない傾向にあります。むしろ、説明が上手くないか不器用な人の方が実は売れている傾向にあります。これはなぜかというと、見る側に『応援したい』という気持ちがあるためです。話が上手い人ほど説明が完璧なので、この応援したいという気持ちが起こりにくいのです。
例えばInstagramやYouTubeはかなり成熟してきており、プロ同士が戦う完成されたコンテンツとしてクオリティが高くなってきていますが、ライブコマースをうまく活用するためにはあまり完成度を高めてはいけないのです。台本や構成を作り過ぎると、それを読んでいる感じが視聴者に伝わりLIVE感が損なわれて引いてしまいます。むしろ、言葉に詰まったり不完全な方が良いという人間の心理が働いているのです。
ライブコマースの醍醐味は、リアルタイムでの掛け合いやコメントのやり取りなので、感情移入した方がより強く結果に反映されます。特に企業はブランドイメージのために完璧を求めてしまいがちですが、応援の余地を残しライブ感を演出する不完全さがライブコマースには必要だということを意識してみると良いでしょう。