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ららぽーとがスタッフの魅力を発信しリアル来店促進狙うツール「ザッピング」とは

コロナ禍において、店舗の魅力をいかに伝え実際の来店を促すか、多くの企業が模索しているのではないだろうか。「ららぽーと」を運営する三井不動産商業マネジメントは、オンラインツールを活用して店舗とそこで働くスタッフの魅力を伝えていこうと、動画接客ツール「ザッピング」の運用をスタートした。店舗スタッフ自らがリアルタイムに動画を発信できるという特性を活かし、24時間どこにいてもららぽーとの買い物体験ができる楽しさを提供する。ららぽーとが推進するオムニチャネル化の重要戦略として、このザッピングをどのように活用しているのか。今後の展望も含めて、三井不動産商業マネジメント運営第一本部 運営室 運営統括課 課長の丸山周太氏に話を聞いた。

店舗スタッフの自発性に任せて一定の運営ができる効率の良さが魅力のザッピング。

お客5万人の店舗スタッフをつなぐ架け橋

ウェブサイトやECサイト上にストーリー型の連続再生動画を投稿できる動画接客ツールがファナティック(東京都渋谷区)の「ザッピング」だ。それを導入し、若者を中心に人気を呼んでいるのが三井不動産ショッピングパーク(ポータルサイト)内にある「HELLO ROOM」だ。「HELLO ROOM」は、三井不動産の施設にある店舗スタッフが新しい情報や、スタッフ一押しのアイテムを簡単に紹介することができる。店舗スタッフはスマホさえあれば、時間をかけずタイムリーに投稿できるのが魅力で、ユーザーは、三井ショッピングパーク公式通販サイト『&mall』や、各アパレルのECサイトに遷移して購入することもできる。

「オムニチャネル化」を推進する三井不動産商業マネジメントはまず202012月にライブコマースの配信をスタートさせた。「生配信ショッピングMEETS SHOP」と名づけ、20223月末時点ですでに180回以上の配信実績がある。

 しかし、ライブコマースの配信は「事前準備に時間がかかるため、店舗スタッフが伝えたい情報をリアルタイムに発信できない、という課題があった」(丸山氏)。事前に台本が必要なほか、商品登録にも時間を要するなど、ライブコマースの配信は時間がかかる弱点があった。

また、参加する店舗スタッフも、コマース機能を生かしやすいアパレルや雑貨といった物販店舗に偏る傾向もあった。それらの課題を解決できるツールとして、ザッピングを選んだのである。202111月から、ららぽーとの首都圏3施設(TOKYO-BAY、富士見、横浜)と、ラゾーナ川崎プラザの計4施設でトライアル運用を開始。各施設のウェブサイトから、ザッピング動画を集約したオンライン上のショールーム「HELLO ROOM」に遷移することができ、各施設の店舗スタッフが投稿する動画を視聴することが可能になっている。

立ち上げから4カ月が経過したが、その手軽さから多くの店舗スタッフが活用。アパレル、雑貨系の店舗以外にも、飲食店舗やサービス店舗など幅広い業種のスタッフが投稿する。

旬な情報をリアルタイムに簡潔に届ける

ライブコマースの配信と異なり、ザッピングの魅力はスマホ1台でスピーディに簡単に投稿できる点にある。演出マニュアルを作成して全店舗に提供しているが、具体的な発信内容は店舗スタッフに委ね、施設側は不適切な動画がないかのチェックを行う。

「店舗スタッフは、届けたい情報を、好きなタイミングに発信することが可能。旬な情報を簡潔にお届けするため、ザッピングの動画は30秒以内、できれば20秒程度を推奨。簡潔に情報を発信するのがザッピング、双方向のコミュニケーションを通じてしっかりと情報を伝えたい場合はライブコマース、と使い分けをしている」。

トライアル導入した4施設のザッピング動画投稿数は、月間約500本。店舗スタッフはららぽーとのオンラインショールーム『HELLO ROOM』に投稿するとともに、同じ動画を店舗独自のインスタグラムにアップしてリユースするケースもある。

トライアル運用してみて、実際に丸山氏が感じるザッピングのメリットとは何なのか。

「動画にすると、モノの質感や着用感などディティールが訴求しやすくなる。見ているお客様が実際に使用するシーンや着用シーンなどを想起しやすくなるほか、店頭で質問される内容を動画に盛り込んで発信できることも、ザッピングのメリットだと思う」。

 実際、店舗スタッフの声も前向きなものが多いという。

最初は躊躇していた店舗も始めてみると順調に軌道に乗っていくという。

「スタート時点では投稿に躊躇していたスタッフも、使ってみたらとても便利なのでこれからも活用したい、という声が多くあがってきている。いいな、と思う他店舗の好事例を参考に、動画の投稿を繰り返すことで、次第に動画のクオリティもアップしてきた」。

投稿を増やして商品の魅力を伝えたいという目的もあるが、「スタッフの魅力を伝えることも、ザッピング導入の目的の一つ」と強調する丸山氏。

「実際、店舗スタッフ目当てに来店してくれるお客様もいらっしゃる。店舗スタッフのファンがショップの顧客となり、最終的にららぽーとをはじめとする当社運営施設の支持に繋がると考えている」。

“スターコマ―サー認定”で店舗スタッフの動画スキルを支援

実際の消費者の反応はどうなのか。 

「動画がきっかけとなって来店されるお客様もいるし、ザッピング動画からそのまま三井ショッピングパーク公式通販サイト『&mall』で買い物をされる方もいる。視聴者のシーンに応じて、使い分けをされている印象だ。ザッピングの投稿を通じて、今まで接点のなかったお客様と新たな接点を持つことができる、その点にも可能性を感じている」。

より魅力的な投稿を増やすために施設側ができることはないかを検討し、店舗スタッフを奮起させるための策も打ち出した。

それが、「スターコマ―サーオーディション~ららぽーとの未来のスターを探そう~」と題した、オンライン上の接客動画コンテストである。応募された動画を見て審査し、優秀者を表彰して「スターコマーサー」に認定する試みをはじめた。

「投稿への意欲やスキルアップに繋げてもらうことが狙い。入賞したスタッフには積極的にザッピングやライブコマースに出演してもらい、店舗や商品の魅力を発信してもらっている」。

リアル施設へ呼び込むために

コロナによって消費者をリアル施設に呼び込むことが難しくなっている今、さまざまな形で消費者と接点をもち、コミュニケーションする場が必要となっている。

ザッピングという魅力発信ツールを通じて、普段なかなかららぽーとに足を運べない消費者も、実際にショッピングをしているような体験ができる。ショッピングの醍醐味ともいえる新たな発見やワクワク感や楽しむことができるのだ。

店舗側との接点が多いボジションだという、三井不動産商業マネジメント運営第一本部 運営室 運営統括課 課長の丸山周太氏

丸山氏は、「4施設でトライアル運用をしてみて、動画投稿の伸びしろ、可能性を強く感じている」と話す。ららぽーとをはじめとする全国19のリージョナル型ショッピングセンター(RSC)を対象に、ライブコマースとザッピングの運用を拡げていく予定だ。モットーは「リアル施設の買い物を、より便利に楽しく快適にする」こと。今後も、オンラインツールを駆使して消費者との接点を増やしていく。

「私たちが目指すのはファンを増やすこと。ららぽーとをはじめとするRSCには、約5万人の店舗スタッフがいる。そのスタッフ一人ひとりのファンを増やすことが、ららぽーとの魅力アップに繋がると考えている」。

20225月以降、全国の店舗5万人がザッピングを使い始める。その可能性、今後の展開を注視していきたい。