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チャットボットにライブコマース…ECの将来に影響するトレンドを解説!

この2年、パンデミックはデジタルトランスフォーメーション(DX)の波を引き起こし、消費者行動を変え、ビジネスに新たな課題をもたらしました。ECは爆発的に成長し、わずか90日で10年分の成長がみられました。世界のEC売上は4兆ドルに到達し、今後も年率30%の成長が継続すると予想されています。今回は、ECの将来に関わるトレンドを、市場・消費者・技術の観点から展望してみます。

CrispyPork/istock

モバイルユーザーが大幅に増加

米国ではECの普及率が急速に伸長している

 1995年にアマゾン(Amazon.com)がオンラインでの書籍販売事業を開始して以来、EC市場は絶えず変化してきました。パンデミック以降の市場の変化に関するトレンドは以下の3つです。

 EC化の進展:経済活動が減速するなか、新型コロナウイルスはECの急増とデジタル変革の加速をもたらしました。世界的に見ても、ECの普及率は現在の15%から2025年には25%に増加すると予測されています。

 モバイルユーザー:消費者はこれまで以上に携帯電話に時間を費やすようになり、その結果米国におけるモバイルECの売上は2020年で31.5%2021年で28.8%増加、EC全体の54%を占めています。すべてのEC事業がモバイルフレンドリーであり、モバイルUX(顧客体験)とモバイル決済オプションに投資することが不可欠です。

 B2Bにおけるバーチャル技術:対面の販売チャネルが閉鎖されるなか、B2Bの購入者の75%が対面よりオンラインでの購入を好むという調査結果があります。この傾向が続くなか、B2B向けECではCRM(顧客関係管理)やAIを活用したリモートでの販売をサポートする技術への投資を進めており、トレンドとして把握しておく必要があります。

高齢者のEC利用も増加傾向に

 コロナ禍でソーシャルディスタンスの確保が重視された結果、消費者の買物行動も変化しました。あらゆる業界のECで顧客セグメント、行動、期待に変化が見られます。

 顧客セグメント- 高齢者:最重要かつ予想外の変化は、高齢者のオンラインショッピングです。65歳以上の消費者の21110月までのオンラインでの消費額は平均1615ドルで対前年比49%増、購入頻度も同40%以上増加しました。この傾向はパンデミック後も続くとアナリストは予想していています。ブランドは、高齢者層にリーチするためにマーケティング戦略を調整し、メッセージやオンライン体験のパーソナライズにより長期的なロイヤルティを築く必要があります。

 顧客行動–新製品の購入:今までオンラインで購入することがほとんどなかったアイテムが、現在世界中でネット購入されています。娯楽、生活必需品、食品、飲料、そして新製品を見つけたいという欲求に対応するため、無料トライアルとサブスクリプション(サブスク)モデルが加速しました。サブスクの新規加入者数は、新型コロナウイルス感染拡大後すぐに増加に転じ、コロナ前と比較して最大約85%増加しました(下記図表参照)。サブスクは顧客を定期購入者に変え、より深い関係を育みます。サブスクへのシフトは今後も続くと予想され、参入を検討している企業にとっては、またとない機会になります。

サブスクの新規加入者数はコロナ禍で爆発的に伸びている

 顧客の期待–パーソナライズと利便性:最近のForrester Reportによると、消費者の79%がよりシンプルで短時間の買物体験を期待しています。消費者の78%は、パンデミック前よりも利便性を重視しており、90%近くがシームレスで柔軟な支払いオプションが提供される場合に、より多くお金を使うという調査結果があります。新型コロナウイルスの蔓延は、利便性やパーソナライズ、即時性に対する消費者の欲求を増幅させており、企業の対応が求められています。

ライブコマースのプラットフォームが台頭

 テクノロジーにおいては、「購入前」「購入中」「購入後」のチェックアウト体験を強化する技術がECの今後に影響を与えると考えられます。

 購入前:急成長しているトレンドの1つが「チャットボット」です。チャットボットとは、事前に定義された条件、トリガー、イベントに基づき顧客との対話を自動設定するプログラムです。2024年までに世界の市場規模は13億ドルを超え、2021年には企業の80%が何らかのチャットボットを導入すると予測されています。

 もう1つのトレンドは「ライブコマース」です。ロックダウン中に飛躍的に成長しました。ブランドは製品やサービスを紹介しながらバーチャルに視聴者と関わることができ、米国でも「PopShop」や「ShopShopShops」などのプラットフォームが台頭しています。中国ではすでに巨大な市場を形成しており、2020年の推定売上は1000億ドルを超えています。

 購入中:買物客の70%はチェックアウト時に商品を落としており、カート放棄は世界で4兆ドルに上ります。スピード、利便性、パーソナライズは、購入体験に不可欠な要素で、ワンクリックで安全にチェックアウトできる技術が求められています。eウォレットも急速に普及しており、2021年には66000億米ドルに達すると予測されています。

 また、「分散型コマース」、すなわち消費者が別のページ、ウィンドウ、またはタブに移動することなく、体験しているコンテンツから直接購入できるようにする技術も継続して成長が期待されています。EC企業は戦略パートナーと提携し、顧客体験を向上させると同時に、新たな収益源を創出することができます。分散型コマースでは、顧客体験の向上が非常に重要で、AIと機械学習を用いたパーソナライゼーションが成功の鍵になります。

 購入後:購入完了後はブランドロイヤルティを確立するための重要な瞬間です。84%の消費者は、高価なものの購入の際、購入後のコミュニケーションを増やすことが重要だと感じています。一般的なEメールに加え、若年層にはテキストメッセージやプッシュ通知など、顧客セグメントに応じたチャネルを選択する必要があります。

 また、購入後の確認画面は、ECブランドと顧客との重要なタッチポイントです。顧客の購入と関連性の高い自社や第三者のオファーを提示することで、顧客とのより深い関係が構築され、EC企業に新たな収益がもたらされます。

 ECが成長と変化を続けるなか、最も重要なトレンドは、モバイルコマースとパーソナライゼーションです。モバイルデバイスを使用しているお客さまを中心に、利便性、信頼性、効率性を構築し、お客さまに合わせた体験を提供する必要があります。これらは、現在、そして将来的にもEC成功の鍵となります。

 EC業界は大きく進歩しています。ECを成功させるには、消費者向けおよびバックエンド技術への投資と、継続的な進歩に適応する能力が必要不可欠でしょう。