フルセルフ決済の浸透もあり、複雑化する万引き被害に対して、小売業はどう対策すべきか。デジタル活用とともに、地域の警察やほかの小売業とも連携を進めながら、先進的な万引き対策を行うトライアルカンパニー(以下トライアル、福岡県/石橋亮太社長)の取り組みをまとめた。
技術の進歩が生んだ「新型万引き」
「令和4年版警察白書」によると、直近10年の万引きの認知件数は、2012年が13万5224件、以降右肩下がりではあるものの21年も8万6237件起こっている。一方、全刑法犯に占める万引きの認知件数の割合は上昇傾向にあり、21年で15.2%に達している。また、全万引き犯に占める65歳以上の割合は増加傾向で、高齢者の検挙割合でみると、12年の30.8%から直近21年では41.8%にまで急増。万引き犯は幅広い世代に広がっている。
トライアルのお膝元である福岡県でもそれらの傾向は同様だ。近年の小売店における万引きの傾向や変化については、「(福岡県では)スーパーマーケットなどの商業施設で発生件数の約5割を占めており、非常に高い」(福岡県警察本部生活安全部生活安全総務課)と言う。
そうしたなか近年は、「新しいタイプの万引き」が増えている。トライアルでは、5年ほど前までは、店内で商品を手持ちのバッグなどに入れ精算せずに持ち去るタイプの万引きがほとんどだった。しかし、14年ごろから「フルセルフレジ」等によるセルフ決済を導入したことで「万引きの中身」が変わっていったという。決済時の行動に起因する万引き、不正が大多数を占めるようになったのだ。
トライアルのシステム本部防犯DX推進部の荒木翼部長は「売場で行われる従来型の万引きと違い、フルセルフレジなどで行う万引きは、従来はなかったもので、技術の進歩によって新たに起きた事象だ」と語る。
なお、セルフ決済に起因する万引き主体に変わったからといって、検挙率に大きな変化はみられない。冒頭の「令和4年版警察白書」によれば直近10年の検挙率は大体70%前後で推移しており、むしろ直近21年の73.6%はこの10年でもっとも高い数字だ。
荒木氏も「フルセルフレジで万引きをしても、通常万引きと同様に証拠を押さえて窃盗罪として手続きを行うので、結局は捕まることに変わりはない。ここ数年は、セルフ決済での万引きが増えているので、万引き対策を十分に行っている」と言う。
3つの切り口で行うトライアルの万引き対策
ここでトライアルがどのような万引き対策を行っているかを
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